「電子カルテデータの2次利用を目的とした取り組みが進んでいるが、手放しで喜んでいいのだろうか」――。第37回医療情報学連合大会(第18回日本医療情報学会学術大会)の大会長講演で、日本医療情報学会理事長の大江和彦氏はこう投げかけた。

「あるべき診療記録ができる電子カルテシステム再考-新たなる挑戦の必要性-」と題して講演する学会長の大江氏
「あるべき診療記録ができる電子カルテシステム再考-新たなる挑戦の必要性-」と題して講演する学会長の大江氏
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 現在、さまざまな医療情報の2次利用プロジェクトで、各病院の電子カルテからデータ登録する環境が整備されつつある。しかし、電子カルテデータをそのまま利用することに対して手放しで喜べない理由として、大江氏は次の3点を挙げる。

 (1)多施設から収集されるデータはそのまま統合可能なのか、(2)電子カルテから2次利用系にデータを抽出するデータ処理パイプラインは元データを正確に反映しているのか、(3)電子カルテ情報には医療の実施状況と患者の状態がどの程度正確に必要な粒度で記録されているのか、である。

 この中で、特に大江氏が講演の論点としたのは(3)について、つまり「電子カルテ(に記録された情報)は正確なのか?」という点である。正確性を妨げている代表格が、病名だ。いわゆるレセプト病名やDPC病名、電子カルテの病名登録機能で記載された病名、カルテ記事中に記載された表現系の病名、レポートに記載された病名などが、電子カルテ内に散見されるのが現状だという。さらに、「いずれにも終了日がないので、どれが現在療養中の病名なのか判定できないことも多い」(同氏)。