根拠情報とのひも付け記録がない

 電子カルテ情報の正確性や情報粒度の問題点については、次のような例も指摘した。「胃がん」と登録されているケースでも、病理検査のレポートでは自由記述で「胃の腺がん」、入院カルテのサマリーには「胃前庭部小弯に腫瘍病変を認める」という所見が見られたという。「胃がんがどこにあるか記載されないと、IDC分類では“胃の悪性新生物(部位不明)”とコーディングされる。電子カルテ上も、2次利用の症例登録データベース上も、永遠と部位不明のままになる」(大江氏)。

 大江氏は、処方・服薬に関する記録についても、処方オーダーがあるのに服薬実施記録がない、あるいは実施記録はあるのに処方オーダーがないといった事象も見られたとする。「患者の服薬に至る過程でどこの情報を取得するかかによって異なってしまう」(同氏)との問題点を指摘した。

 現在の電子カルテ記録は、指示・実施予定情報と付帯的情報は、ほぼ電子的に記録され保管される。また、実施結果情報はほぼ電子的に記録され保管される。ただし、記録される場所はそれぞれで、使われている語句は標準化されていない。

 加えて、患者状態の観察・収集情報、検査の解釈などは、記載するかどうか医療者任せだと大江氏は語る。「診療行為に対する医療者の医学的意図や判断根拠といった事柄は、計算機では読み取ることはできない」(同氏)。つまり、オーダー情報入力時に、その内容の根拠情報とのひも付け記録がないのが現在の電子カルテだというわけだ。