「ITC(International Test Conference)2016」(米テキサス州フォートワースで2016年11月13日~18日に開催)のセッション14「ATE II」では、3件の発表すべてが日本からの論文だった。いずれもATE(Automated Test Equipment)による測定手法に関する発表である。

 最初に発表したのは、東京大学である。タイトルは「Power Supply Impedance Emulation to Eliminate Overkills and Underkills due to the Impedance Difference between ATE and Customer Board」だった。チップ動作によって電源からチップに電流が流れるが、ATEでの動作環境と実際の製品に組み込まれた場合とでは、その電源インピーダンスが異なるために異なる電源電圧波形となる。その結果、ATEでの試験では仕様を満たして出荷したものの、実動作時に動作不良となったり(テストエスケープ)、逆に実動作では問題なく稼働するのにATE試験では不良品と判断して廃棄してしまうこと(オーバーキル)が起こる。

 この発表では、実動作環境における電源インピーダンスをATE上に実現するための技術を提案している。まずは両者の電源インピーダンスの周波数特性を測定し、その差分を埋めるための補償電流源をATEに用意する。ATE上での電源電圧変動をA-D変換器で測定し、FPGAを用いたデジタルフィルターを介して必要な補償電流値を計算して電流を注入する。デジタルフィルターの中身はインピーダンスの差分にもとづいて解析的に決定される。このようにして、ATEの電源環境を実動作時の電源環境に合わせることで、ATE上の電源ノイズ波形を実動作のノイズ波形に合わせることが可能となり、ATEテストにおけるオーバーキルやアンダーキルを低減することができることを示した。