米国テキサス州フォートワースで開催の「ITC(International Test Conference)2016」(11月13日~18日)の併設イベントとして今年も「Industry Test Challenges Meeting」が開催された。企業における先端事例に関する9件の講演があった。

 Industry Test Challenges Meetingは米GLOBALFOUNDRIES社のP. Nigh氏が主宰するITC併設イベントとして、毎年開催されてきた。昨年はNigh氏が米IBM社からGLOBALFOUNDRIESへ移籍したために、一時はこのイベントの開催が危ぶまれたが、今年はとくに問題もなく無事開催された。今回は、9件の講演に加えて、多数の専門家を集めたパネル形式の討論セッションが設けられ、様々なテストに課題に関して各社の意見が述べられた。

 講演は、昨年までの2年間はテストデータ活用関連が多数を占めていた。今年は様相が異なり、広い分野のホットな話題が採り上げられた。以下に、とくに興味深かった2件の講演を中心に、イベントの内容を紹介する。

 米Texas Instruments社のV.R. Devanathan氏は、アナログ故障シミュレーションに関する事例を紹介した。アナログ回路のテストコストが問題化しており、これを削減するためにはディジタル回路と同様に構造テストの利用が重要課題となっている。このための重要技術の1つがアナログ故障シミュレーションである。

 同氏が提示した手法では、アナログ回路に発生する故障を抽出し、故障回路をシミュレーションすることによりこれを検出する条件を求め、その条件での故障検出範囲(カバレッジ)を計算する。この手法により得られる効果として、テスト検出率が解析可能、テスト時間が削減可能、故障診断の自動化が可能、トリミングの有効性が解析可能の4点を挙げた。適用範囲拡大のための課題として、テスト改善の自動化や、シミュレーション時間の短縮があるとのことだった。手法自体にそれほどの工夫は見られないが、実際に適用・評価してみたという点が非常に興味深い。