ビッグデータからエビデンスを

 医療行為のデジタル化の一例に挙げたのは、問診時の患者の「主訴」のデジタル化。従来は構造化されていない形で電子カルテに記載されてきたこうした情報を「最初から構造化された形でシステムに入れていく。それに対する医師の所見も構造化された形にする。現場を本当に効率よくするこうしたシステムが、これからは普及していくはずだ」(藤本氏)。

 医療現場で想定されるICT活用の姿として藤本氏は、こうした診療(問診)支援システムの他に、実際に開発が進んでいる2つの事例を挙げた。1つは、人工知能と大腸内視鏡を組み合わせた内視鏡診断支援システム。「まずは医師が知見を教え込み、その後はディープラーニング(深層学習)でどんどん進化する」(同氏)システムである。もう1つは、手術室内のあらゆる機器がつながり、手術中のさまざまなデータを収集・解析できる「インテリジェント手術室」(関連記事1)。

 これらのシステムが生み出すデータを活用することで「医療がビッグデータによってエビデンスを持つ。こうした仕組みを、世界に先駆けて日本で作っていく」(藤本氏)ことが政府のビジョンである。

 ここに向けて、次世代医療ICT基盤協議会では現在、「代理機関(仮称)」に関する議論を進めている(関連記事2)。2017年に施行される改正個人情報保護法では、「要配慮個人情報」の取得・第三者提供について、本人の同意取得(オプトイン)が原則になる。この影響で医療データの2次活用が滞ることを避けるために、オプトアウトでの第三者提供を担う機関の認定制度を導入しようというのが、代理機関制度である。

 この制度については、代理機関に加えて、各代理機関の情報の保有状況を把握し、必要に応じてそれらの情報の統合を支援する「支援機関」を設けることも検討しているという。代理機関制度の整備により、医療データの利活用について「世界的に見ても優位性のある研究基盤を持つ国になれる」(藤本氏)とした。