ヒトも含めて最適化

図6●ヒトも含めたシステムを最適化 日立のスライド。
図6●ヒトも含めたシステムを最適化 日立のスライド。
[画像のクリックで拡大表示]
図7●幸せ度が高いと仕事がはかどる 日立のスライド。
図7●幸せ度が高いと仕事がはかどる 日立のスライド。
[画像のクリックで拡大表示]
図8●様々な分野で実績 日立のスライド。
図8●様々な分野で実績 日立のスライド。
[画像のクリックで拡大表示]

 矢野氏の講演の後半のトピックは、既存システムとHだけでなく、さらにヒトを含めたシステムをいかに最適化するだった(図6)。多くの業務システムは、上述した物流倉庫管理システムのようにヒトが関連しており、人工知能を業務システムに活かすためには、ヒトを含めた評価関数の作成が必要である。矢野氏によれば、ヒトの指標として「幸せ度」が重要だという。「ヒトは幸せだと思うと、仕事の効率も上がることがさまざまな研究で明らかにされている」(同氏)からである(図7)。

 では、その幸せ度はどうやって計測するか。直接聞くという手段のほかに、ヒトの活性度を見る手段があると矢野氏は言う。活性度は、加速度センサーで測る。幸せ度が低いと積極的な行動をしないため、加速度が変化しにくい(例えば、椅子に座って言われた通りに作業をする)。一方、幸せ度が高いと、積極的に行動し、加速度が変化しやすいという(例えば、新しい提案を検討するために、同僚や上司に相談するために動く)。

 日立は、日立ハイテクノロジーズが開発した名札型のセンサーを利用してヒトのデータを収集し、それを含めたビッグデータを分析して業務を改善する事例を複数発表している。例えば、三菱東京UFJ銀行(日経テクノロジーオンライン関連記事3)や日本航空(同関連記事4)で実施中である。

 同氏によれば、今回の講演で紹介した事例だけでなく、Hはすでにさまざまな業種で活用されているとのことだった(図8)。固定観念に囚われてしまう人間とは異なり、Hはより広い範囲を見て評価関数を決めることができるため、人間よりも最適な提示できる場合が少なくないとした。

 一方で同氏は、「人工知能が人間の頭脳を置き換えることはない」とも述べている。人間と人工知能は協調してこそ、よりよい成果を出せるとする。実際、上述したように、Hでは、目標と見るべきデータは人間が決めている。その先の作業をせっせと行っているのが、Hである。