ドイツInfineon Technologies社は、「electronica 2016」の開催に合わせ、報道機関に対して車載用途に向けたSiCパワーデバイスの事業戦略を明らかにした。同社は、パワーデバイスの業界最大手で、SiCパワーデバイスの最大手でもある。競合に先駆けて2001年にSiCショットキー・バリア・ダイオード(SBD)を製品化して以来、各種SiCモジュールやJFETを実用化してきた。
2016年に入ると、5月にトレンチ型のSiC MOSFETを製品化することを発表(関連記事)。続いて、同年7月には、米Cree社のパワーデバイスとRFデバイスの部門「Wolfspeed」の買収を発表した(関連記事)。この買収の結果、SiCのダイオードやトランジスタ製品のラインアップを拡充し、SiCダイオードやトランジスタのディスクリート製品市場で、過半のシェアを握るとされる。加えて、Infineon社はSiCウエハーまで手掛けるようになった。
SiCパワーデバイスは現在、産業機器分野や再生可能エネルギー分野、鉄道分野で採用が始まっている。次の市場として同デバイスメーカーが狙うのが自動車分野である。現状では、電気自動車などの電動車両の車載充電器に採用され始めているものの、メーンモーターの駆動部分への採用は、燃料電池車など、ごく一部に限られている。これをさらに拡大するため、Infineon社はどのような戦略を描いているのか。
同社 Electric Drive Train High Power Senior DirectorのMark Munzer氏によれば、SiCパワーデバイスの適用によって達成できる駆動部(インバーター)の電力密度の向上と効率向上を武器に、駆動部への適用を狙うという。電力密度の向上によって、駆動部を小型できる。この点を訴求し、プラグインハイブリッド車(PHEV)への採用を狙う。