英Arm社は、例年通り、米カリファルニア州サンタクララのSanta Clara Convention Centerで同社最大のプライベートイベント「Arm TechCon」を2017年10月24日~26日に開催した。昨年の同イベントでは新製品や新技術が多数発表されたものの(関連記事1)、今年は新製品の発表はゼロだった。

1日目の基調講演に最初に登壇したMike Muller氏(Chief Technology Officer and Co-Founder)も、PSAをしっかりアピール。日経テクノロジーオンラインが撮影。
1日目の基調講演に最初に登壇したMike Muller氏(Chief Technology Officer and Co-Founder)も、PSAをしっかりアピール。日経テクノロジーオンラインが撮影。
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 同社はイベント前日に「Platform Security Architecture:PSA」と呼ぶ、IoTシステムを狙ったセキュリティーの技術基盤を発表した(関連記事2)。記者はそのニュースリリースを見た時、イベント期間中に発表するものが多すぎて、1つくらいは前もって発表しておいたのだろうと、考えていた。ところが、1日目の基調講演、2日目の基調講演、3日目の基調講演が過ぎても新製品の発表がなく、PSAが今回のイベントの最大のトピックだったことを知った(関連記事3)。「いったい何が起こっているのか」と考えながら、展示会場に向かった。1日目と2日目は講演会場で講演を聞いていたので、2日目から開いていた展示場に足を踏み入れたのは、3日目(最終日)の午後だった。

既存の事業(IPコア事業)に近い企業がブースを並べた方の展示会場。日経テクノロジーオンラインが撮影。
既存の事業(IPコア事業)に近い企業がブースを並べた方の展示会場。日経テクノロジーオンラインが撮影。
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 Arm TechConはArmのCPUコアをベースにしたSoCの開発者向けイベントと聞いている(記者は今年初めてArm TechConに参加)。記者が毎年参加している、IC設計の国際イベント「Design Automation Conference:DAC」( DAC 2017年の関連記事リスト)のArm専門バージョンといったところだろう。実際、講演会場で聞いた講演の内容はDACのArm専門バージョンの雰囲気だった。そして、足を踏み入れたArm TechConの展示会場の半分も、DACの展示会場に似ていた。EDAベンダーやArmと競合しないIPコアプロバイダーのブースなどが並ぶ。さらに、ArmコアベースのSoCを開発・提供する半導体メーカーのブースもあった。DACの展示会場と異なるのは、Arm自身の大きなブースが中央にあることくらいだ。

新規の事業(IoTサービス事業)に近い企業がブースを並べた方の展示会場。日経テクノロジーオンラインが撮影。
新規の事業(IoTサービス事業)に近い企業がブースを並べた方の展示会場。日経テクノロジーオンラインが撮影。
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 ところが、Arm TechConの展示会場の残り半分は、DACのArm専門バージョンの雰囲気ではない。ブースを構えているのは、ソフトウエア企業やいわゆるITベンダーが大半だ。そして、こちら側の展示場の中央にあるのは、「Arm Mbed」のブース。Mbedと言えば、Arm自身のOSである「Mbed OS」が最も知られている。昨年のTechConでMbedの要素が増えた「Mbed Cloud」である。Mbed Cloudは、クラウドベースのSaaSで、IoT機器の管理を容易にすることを狙っている。Mbed Cloudの登場によって、MbedブランドがチップからIoTシステムへと広がった。実際、Arm Mbedのブースのロゴ「arm MBED」の下に書いてあるフレーズは「Simplifying secure IoT solutions」である。