英Arm社は、プライベートイベント「Arm TechCon 2017」(2017年10月24日~26日、米国サンタクララ)で、自動運転に対する取り組みについて講演した。講演タイトルは「Advanced IP Solutions to Enable the Autonomous Automotive Revolution」で、主にCPUコアについて語った。

 ArmのCPUコアは、モバイル機器では圧倒的な強さを誇っていることは自他共に認めるところだ。一方、車載では、インフォテインメント系で利用されているものの、制御系へはなかなか入り込めないでいた。制御系では、実績の長いIDM(Integrated Device Manufacturer)の独自CPUコアが幅を利かせていたからだ。しかし、最近、潮目が変わってきた。

 例えば、オランダNXP Semiconductors社は「S32 Processing Platform」として車載MCU/MPUを一新する(関連記事1)。全製品で、Arm製のCPUコアを採用する。また、デンソーは自動運転向けにArm Cortex-R52のライセンスを取得した(関連記事2)。潮目が変わってきた背景をNXPは次のように説明している。「従来は各ECU(Electronic Control Unit)は緩くつながっているだけで、基本的に独立して稼働していた。一方、将来の自動運転車では、中央制御を司るCPUを中核にして、ほとんどのECUが連携動作する」(同社)。連携動作には、基本的に同じアーキテクチャーのプロセッサーの方が都合が良い。

James Scobie氏。日経テクノロジーオンラインが撮影。
James Scobie氏。日経テクノロジーオンラインが撮影。

 今回の講演に最初に登壇したArmのJames Scobie氏(Senior Product Manager、 CPU Group)は、5種の車載プロセッサーSoC向けにArmのCPUコアの推奨構成を見せた。自動運転向け、パワートレーン向け、画像ベースADAS向け、インフォテインメント向け、中央ボディー制御向けの5種である。例えば、自動運転向けは、「Cortex-A75」と「Cortex-R52」の組み合わせ、パワートレーン向けはCortex-R52、画像ベースADAS向けは「Cortex-A55」とCortex-R52、インフォテインメント向けはCortex-A75とCortex-A55、中央ボディー制御向けは「Cortex-M7」または「Cortex-M0+」といった具合だ。また、同氏は自動運転に向けたArmのチャレンジが3つあり、(1)十分な演算能力の提供、(2)機能安全性の確保、(3)セキュアー性の担保だとした。

用途別のCPUコアの構成。Armの図。
用途別のCPUコアの構成。Armの図。
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