ビッグデータの活用で、緻密なリスク計算によるダイナミックな保険サービスを提案する――。年齢と性別群を基に保険料を決定していた生命保険ビジネスが、ビッグデータの活用によって大きく変わりつつある。アクサ生命保険 インフォメーションテクノロジーデータ管理 データアナリストの野田隆広氏は、「デジタルヘルスDAYS 2016」(2016年10月19~21日、主催:日経BP社、協力:日経デジタルヘルス)のオープンシアターに登壇、ビッグデータ時代の保険ビジネス戦略を語った。

アクサ生命保険の野田氏
アクサ生命保険の野田氏
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 日本のAXAグループにおけるビッグデータ活用の一例が、自動車保険のアクサダイレクトの「MIRAI DRIVE PROJECT」。ビッグデータを活用して、「運転を見える化して、安全運転が楽しいという意識を醸成し、安全運転を楽しむ未来のドライバーを育てる」(野田氏)というプロジェクトだ。「YouDrive」と呼ぶ安全運転診断機能付きの運転データ収集用スマートフォンアプリを用い、運転中のアクセル、ブレーキ、コーナリング操作やスピードなどの運転データを収集。「急ブレーキ、急加速、速度超過といった運転特性データを収集し、アクサ生命でイベント発生件数に基づいて運転スコアを計算し、事故リスクを推計している」と説明する。

 また、生命保険領域では、健康アプリ「Health U」、見守りアプリ「アーユーOK?」という2種類のアプリケーションを提供している。Health Uは、「健康チャレンジ」「ヘルスログ」「ホスピタルサーチ」「ワンクリックダイヤル」の4つの機能があり、自分の生活習慣を理解し、自分にあった改善法をサポートする、健康活動を実践していけることが特徴という。ヘルスデータの収集には、JawboneやFitbitといった外部デバイスと連携して自動的にヘルスログを生成する。

 アーユーOK?は、高齢者の見守りアプリで、日常行動のモニタリングや緊急事態の検知のほか、家庭内のSNSとしても利用可能。「高齢者が操作しやすいことに配慮したユーザーインターフェースを実現」している。

組織体制に見るビッグデータ活用への意気込み

 野田氏は、アクサ生命がビッグデータ活用を推進するために、「まず組織づくりを優先した」という。コアデータサイエンティストと呼ぶ分析専門職によるスマートデータチームを組織し、このチームを中心として商品開発、収益管理、カスタマーサービスなど各部署の分析担当者とコラボレーションして分析プロジェクトを推進する体制を構築している。また、AXAグループは世界64カ所でビジネスを展開しているため、「グローバルなデータイノベーションラボを立ち上げ、各国のデータサイエンティストによるデータサイエンティストコミュニティーを形成した」とビッグデータ活用の意気込みを語った。

 「ビッグデータは一企業や企業グループで活用できる時代は過ぎた」とし、さまざまなデータやナレッジを保有する企業・組織とコラボレーションすることが重要だと指摘。AXA Lab(上海およびシリコンバレー)、AXA Strategic Venturesを設立して、現地のイノベーション企業、スタートアップの発掘・投資事業にも乗り出している。さらに、同グル-プは基礎研究を重要視しており、AXA Research Fundという会社を立ち上げて、大学の基礎研究を支援も行っているという。