市販のイヤホンを使って、リストバンド型の機器よりもさりげなく生体信号を検出する――。そんな技術を、ベンチャー企業のサルーステック(本社・神奈川県横浜市)が開発している。同社 代表取締役の小川博司氏は、「デジタルヘルスDAYS 2016」(2016年10月19~21日、主催:日経BP社、協力:日経デジタルヘルス)のオープンシアターに登壇し、イヤホンを使う利点や今後の展望などを語った。

講演するサルーステック代表取締役の小川博司氏
講演するサルーステック代表取締役の小川博司氏
[画像のクリックで拡大表示]

 小川氏は、自身がパルスオキシメーターを腕に装着して登山した結果、「お腹がすいてバテたときや昼寝をしたとき、槍の穂先へよじ登ったときなどは脈拍がはっきり変化しており、有効なモニタリングができると分かった」。一方で、「登山をする人同士ですれ違うたびに『それは何ですか?』と聞かれる。測定していることを周りに知られず、ユーザー自身にも負担にならない機器が必要と感じた」という。

 そこで、測定機器をどこに装着するべきか全身の各部を検討した結果、「耳」にたどりついたという。耳を選んだ理由を小川氏は次のように語る。「手に装着すると圧力がかかるので、計測した脈派にも影響が出る。耳にイヤホンを入れるだけなら、ごく自然な波形が見られる。また、耳は手に比べて脳に近い位置にあり、日常生活の中で手ほど激しく動くことはない。イヤホンを使って、体の芯に近いところまでアクセスできるのも利点」。

 一般的な音楽パッケージに収録されている音は、人間の可聴域に合わせて、20~2万Hz程度。脈派の周波数は約1.4Hzであるため、市販のイヤホンを使って音楽を聞きながらでも、オーディオ信号と脈派の信号をフィルタで分離して扱うことができる。そこで、サルーステックは、フィルタを内蔵し、イヤホンとスマートフォンをつなぐアダプターを開発した。脈派信号は外部マイク入力でスマートフォンへ伝送する。