“Nokiaの国”からやってきたスタートアップの祭典が、日本のヘルスケア業界に新風を送り込もうとしている。フィンランド発の起業家支援イベント「SLUSH(スラッシュ)」のアジア版として、2015年に日本で初開催された「SLUSH ASIA」。2017年3月開催の第3回では、同イベントとして初めて、ヘルスケアをテーマとしたハッカソンを開催する。

 イベントを主催するSlush Asia CEOのAntti Sonninen(アンティ・ソンニネン)氏は「デジタルヘルスDAYS 2016」(主催:日経BP社、協力:日経デジタルヘルス)のオープンシアターに登壇。「ヘルスケア業界革新!(世界各国の成功事例から学ぶスタートアップの育成のコツ)」と題し、SLUSHの立ち上げや日本での開催に至った経緯を紹介した。

登壇したSonninen氏
登壇したSonninen氏
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 フィンランドで生まれ育ったSonninen氏がSLUSHの立ち上げにかかわったのは、2008年。第1回開催時は、フィンランド国内から300人ほどが参加しただけで、海外からの参加や、スタートアップへの投資案件はゼロだったという。当時はNokia社が携帯電話機の世界市場で高いシェアを誇り、「優秀な人材の多くがNokiaに入社した。フィンランドにおける起業家のイメージは当時、Nokiaに就職できなかった“残念な人”というものだった」(同氏)。

 ところが、2011年に学生主導型のイベントとしたことで勢いがつく。総勢3500人に参加者が増加。スタートアップ560社、ベンチャーキャピタル/ファンド47社が集い、投資案件も動き始めた。2013年にはフィンランド首相が登壇するなど、国も認める大イベントに育った。

 2014年開催時の参加者は1万4000人、スタートアップ1400社とベンチャーキャピタル150社がこれに加わった。2013~2014年の2年間で、400億円にのぼる関連投資が行われたという。こうしてSLUSHは、産業界の「エコシステムにも影響を及ぼすようになった」(Sonninen氏)。