社会全体が医療の担い手となる「ソーシャルホスピタル」。新たな方向性へと医療を取り巻く構造が大きく転換していく中で、既存プレーヤーもその役割を変えていく必要がある――。

 そんなテーマの下、議論が繰り広げられたのが、「デジタルヘルスDAYS 2016」(2016年10月19~21日、主催:日経BP社、協力:日経デジタルヘルス)初日のオープンシアターでの主催者企画。「製薬企業と考えるソーシャルホスピタル」と題した同企画では、いわゆる“既存プレーヤー”の代表格ともいえる製薬企業が登壇。従来の「医薬品提供」にとどまらない新たな役割・価値を提供していく覚悟と、そのためにデジタルヘルス分野との連携に真剣に取り組む考えを訴えた。

 パネリストとして登壇したのは、新たな医療のエコシステムに適合するため、デジタルヘルスを積極活用していく動きを既に見せているMSDとバイエル薬品の2社。MSDからは、経営戦略部門 ビジネス・イノベーション・グループ ディレクターの樋渡勝彦氏。バイエル薬品からは、オープンイノベーションセンター R&Dアドバンストアナリティクス&デジタルヘルスイノベーション マネジャーの菊池紀広氏がそれぞれ登壇した。

MSDの樋渡氏
MSDの樋渡氏
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バイエル薬品の菊池氏
バイエル薬品の菊池氏
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 MSDは、デジタルヘルス分野のスタートアップに、医療業界の専門知識やノウハウを提供する「ヘルステック」プログラムを2016年2月に立ち上げた。第1期として認知症総合支援機構、ミナカラ、エクスメディオの3社を支援先に選定。2016年6月から、3社がそれぞれ開発しているソリューションの事業化にメンターとして協力している(関連記事)

 バイエル薬品は、「Grants4Apps Tokyo」と呼ぶスタートアップ支援プログラムを2016年に新設。医療課題を提示してデジタル技術による解決策を募り、優れた提案に助成金を出すというもの。第1期は慶應義塾大学医学部循環器内科 木村雄弘氏の服薬管理ソリューションが最優秀賞に選ばれた。第2期は疾患の早期発見や健康管理、妊活支援や妊婦支援などのソリューションを募集しており、2016年12月2日に最終選考会を開く予定だ(関連記事)