「総合病院には2つのビジネスモデルが混在している。クリステンセンはこれを別々の病院に分ければコストを下げられると提唱している」――。

 昭和大学大学院 保健医療学研究科 講師の的場匡亮氏は、「デジタルヘルスDAYS 2015」(主催:日経BP社、協力:日経デジタルヘルス)のオープンシアターにおいて、著名な経営学者であるクレイトン クリステンセン氏の「破壊的イノベーション」に基づいて、医療における現状の課題と将来の姿を論じた。

 破壊的イノベーションとは、クリステンセン氏が1997年に発表した書籍「イノベーションのジレンマ」で唱えたコンセプトである。従来技術を改善した「持続的イノベーション」の製品は、ときとして全く違う尺度の技術によって開発された破壊的イノベーションの製品に駆逐されることがある。「要求水準の高い顧客に合わせて製品の改善を続けていると、その改善のスピードに付いていけない顧客が出てくる。破壊的イノベーションの製品はその間隙を突いて、顧客を一気に奪い取っていく」(的場氏)。

 クリステンセン氏は2008年12月出版の書籍で、この破壊的イノベーションを医療分野にあてはめて論じている。「当時はオバマ大統領の就任直前であり、医療保険制度の改革に関心が集まっていた」(的場氏)。同書の日本語版は的場氏と山本雄士氏(ミナケア 代表取締役)が翻訳を担当し、2015年5月に国内出版された(『医療イノベーションの本質 破壊的創造の処方箋』)。

昭和大学大学院保健医療学研究科講師の的場 匡亮氏
昭和大学大学院保健医療学研究科講師の的場 匡亮氏