医療機器業界の巨人、英GE Healthcare社。その日本法人であるGEヘルスケア・ジャパン 技術本部 MRI技術部 プロジェクト・リーダーのラジェンドラ マヨラン氏は、「デジタルヘルスDAYS 2015」(主催:日経BP社、協力:日経デジタルヘルス)のカンファレンスにおいて、医療現場での自律型ロボット「Pepper」の可能性と活用への試みを発表した。

Pepperの発表会見に衝撃を受ける

 GEヘルスケア・ジャパンは、GE Healthcare社の重要なグローバル拠点である。日本国内に研究・開発・製造拠点を保持し、東京都日野市の工場で製造したMRIやCTなどの高度な医療機器は世界各国へと輸出されている。青森県とは異分野融合・連携型の産学連携プロジェクトである「COI(センターオブイノベーション)プログラム」で協業し、医療ビッグデータ解析の分野などで協力関係を結ぶ。

 GE Healthcare社は、巨大なIoT共通基盤である「Predixプラットフォーム」を運用しており、世界中でさまざまな通信事業者をパートナーとして利用の拡大に努めている。このプラットフォームを日本で提供するのがソフトバンク。言わずと知れたPepperの生みの親である。

 こうした背景があるため、戦略的にPepperとの協業を進めたのかと思われるそうだが、実際はマヨラン氏個人の発想からスタートしたという。2014年6月、Pepper発表会の様子を動画共有サービスの「Ustream」で閲覧したマヨラン氏は、そのときの衝撃を次のように語る。

「チャーミングなインターフェースはもちろんのこと、多彩なセンサーを複合的に搭載したロボットが、一般家庭に普及可能な価格帯で提供されることに衝撃を受けた。頭脳がクラウドにつながるロボットが社会のいろんな場所に進出する意味は大きい」。

 即座に思いついたのが「医療現場で使いたい」というアイデアだった。普段はエンジニアとしてMRIやCTの開発に取り組んでいるマヨラン氏は、「少しでも患者が楽に使えないかという思いを常に持っている」。3年前、新しいMRIの開発にあたって実施したニーズ調査では、ある年配の女性患者が「まな板の上の鯉の気分」と答えた。これを聞き、マヨラン氏は非常にショックを受けたという。

GEヘルスケア・ジャパンのラジェンドラ マヨラン氏
GEヘルスケア・ジャパンのラジェンドラ マヨラン氏