サルーステック代表取締役の小川 博司氏
サルーステック代表取締役の小川 博司氏
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長岡技術科学大学の三井 大和氏
長岡技術科学大学の三井 大和氏
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ハートマークのオブジェクトを用いた視覚的フィードバック
ハートマークのオブジェクトを用いた視覚的フィードバック
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 サルーステック 代表取締役の小川博司氏は、長岡技術科学大学の三井大和氏と共に「デジタルヘルスDAYS 2015」(主催:日経BP社、協力:日経デジタルヘルス)のオープンシアターに登壇、「生体信号の表示方法 ― フィードバックを目指して」と題して、VR(仮想現実)を使って生体情報をフィードバックすることで、「ユーザーを飽きさせずに、継続的な測定を可能にする」手法を解説した。

 小川氏は冒頭、「非侵襲という言葉を使っているうちはウエアラブルデバイスは普及しない」と断言した。「過去にも10年に1回の頻度で、ウエアラブルのブームが何度かあった。だが、何かを測定するために何かを装着するのではダメ。そういう人間の特性を踏まえたアプローチができないから何度も苦渋をなめてきた」。

 そこでサルーステックでは、イヤホンやヘッドホンといった日常的に装着するデバイスを用いた脈波測定の技術を開発した(関連記事「密閉型イヤホンで音楽を聴きながら脈波を検出」)。この脈波の測定時に、ユーザーに脈波の波形を見せると「穏やかな気持ちになる人が多い」(小川氏)ことが分かった。これは「引き込み現象」と呼ばれるもので、このほかCTスキャンの最中にユーザー自身の心臓の鼓動を聴かせると落ち着いた気持ちになることが知られている。

 小川氏と三井氏は三菱ケミカルホールディングスの地球快適化インスティテュートと協力しながら、この引き込み現象を生体情報の測定時に利用する研究に取り組んでいる。単なる波形ではなく、ハートや蛍の形をしたオブジェクトを心拍数などに合わせて動かしたり、形状や色を変えたりする視覚的なフィードバックをユーザーに与えることで、測定に集中させるのだという。「単なる波形や数値だけでは、一般のユーザーは健康状態を理解できない。視覚的なフィードバックを見せることで、不整脈などの症状を分かりやすい形で知らせることもできる」(三井氏)。