2017年10月末に開催された、東京モーターショー併設セミナー「FUTURE MOBILITY SUMMIT 2017」(会場:東京ビッグサイト)では、日本の主要自動車メーカーや部品メーカーが登壇した。業界のキーパーソンが、「自動運転、電動化で2020年のクルマはどこまで進化するのか」をテーマに議論した。

 自動車メーカーとして最初に登壇したのは、トヨタ自動車で燃料電池車(FCV)「MIRAI」の開発を担当したことで知られる製品企画チーフエンジニアの田中義和氏。

 同氏は「エネルギー多様化時代における環境車戦略~水素社会実現に向けたトヨタの取り組み~」をテーマに、これまでのトヨタのハイブリッド車への取り組みとともに、トヨタがマツダやデンソーとともに本格的に取り組もうとしているEV(電気自動車)の開発に関して、走行用電池に将来使用予定の全個体電池について紹介した。

トヨタ自動車Mid-size Vehicle Company MS製品企画チーフエンジニアの田中義和氏
トヨタ自動車Mid-size Vehicle Company MS製品企画チーフエンジニアの田中義和氏

 「全固体電池は、耐熱性が高いため冷却機構が不要となり、小型化が可能。今後研究開発に注力していく」と述べた。将来の水素利用については「燃料電池の必要性や水素社会の必然性を検討した上で研究開発を進めることを決定した」ことを踏まえ、次世代の燃料電池スタックや水素タンクなどを内製で開発していることを解説した。

 2017年1月にスイス・ダボスで開催された“水素版タボス会議”で発足した「Hydroegen Council」(水素協議会)にも触れ、世界的なエネルギー・運輸・製造業の企業が発足当初の13社から27社に増加するなど、水素社会の構築に向けた、トヨタを含めた世界的な協業が進んでいることを強調した。

日産自動車理事(VP)総合研究所長 アライアンス グローバル ダイレクターの土井三浩氏
日産自動車理事(VP)総合研究所長 アライアンス グローバル ダイレクターの土井三浩氏

 日産自動車総合研究所長アライアンスグローバルダイレクターの土井三浩氏は、「Nissan Intelligent Mobilityが目指すクルマ、人、社会の新しい関係」をテーマに、都市の移動では人口密度によって形態は変化するとして、大都市の移動形態を比較。「東京は特異であり自動車よりも公共交通が速いなど、モビリティはローカルに捉えるべき」と指摘した。

 EVの運用について「リーフによるビッグデータの蓄積によって電池性能の限界が見えてきた。今後は蓄電池の材料改善が必要」とした。自動運転については、2022年での完全自動運転の実現を目指すとしつつも「検証してきたものを超える、遭遇したことのない場面にどう対応するか」を課題とし、車両情報をやりとりするための管制センターとクラウド・コンピューティングをつなぐ情報システムの構築の必要性を説いた。