糖尿病重症化予防プロジェクトを実施

 経済産業省では、健康・医療情報利活用のユースケース創出として、日常のヘルスデータを収集するIoTソリューションの確立も進めている。「個々人のスマートフォンやウエアラブルデバイスなど、センサーによって蓄積される生活情報・健康情報を本人や周囲に対して見える化すれば、パーソナライズした予防やケアができるのではないかと考えた」(富原氏)。

 平成28年度には8コンソーシアムにおける約1000人を対象にHbA1cの変動を調査し、実証事業を実施。日常的な健康情報を活用した行動変容によって、糖尿病軽症者の状態改善に対する効果が認められた。今年度からは日本糖尿病学会の協力を得て、糖尿病重症化予防プロジェクトとしてより大規模かつ厳格に実施する予定だ。富原氏は「採取したデータを共通のデータベースに蓄積することで、より大きな可能性が広がるのではないか」と語った。

 こうした医療分野のデータ利活用基盤整備とともに、地域包括ケアシステムの構築にも力を入れる。富原氏は「本当に医療が必要な人を早い段階で探し出し、医療機関につなぐとともに、退院後も地域の企業やコミュニティーが健康づくりや食事の面まで含めて支えていく」ことが求められる時代だとする。その上で、地域版の次世代ヘルスケア協議会、ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)の活用、高齢者の社会参画モデルケースなどに言及した。

 これらは先に述べた生涯現役社会ともつながる部分が多く、「これからの65歳以降は第2の社会活動期。ハイブリッド型社会が到来する。そこに関わってくるのが健康経営であり、ITの利活用であり、地域のエコシステムだ」(富原氏)と締めくくった。