昭和大学 江東豊洲病院消化器センターの伊藤氏
昭和大学 江東豊洲病院消化器センターの伊藤氏
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 「手軽で簡単に受けられる高精度で安価ながんの診断技術が求められている。そうした技術が浸透すれば、医療だけではなく世の中そのものが変わる」――。

 昭和大学 江東豊洲病院消化器センター講師の伊藤寛晃氏は、「次世代がん診断サミット2015 ~『超早期』への破壊的イノベーション、始まる~」(主催:日経デジタルヘルス)に登壇。このように力強く語った。

 今回の講演では豊富な画像や動画を用いて、がん治療法や医療器具の進化について触れた伊藤氏。自身も2013年に「超早期がん診断」の新技術を発表している。これは血液1滴からわずか7分で胃がん、大腸がん、良性疾患の識別が可能になる技術であり、表面増強ラマン散乱を応用したバイオチップを用いたもの。神戸市の医療機器会社であるマイテックと共同で開発を重ね、現在では3分以内での診断が可能な段階まで進み、1年以内の臨床応用を目指す。

 一般診療におけるがん治療は内視鏡的治療、外科的治療、化学療法、放射線治療、免疫療法などがある。伊藤氏は、内視鏡による食道内の様子を見せながら「日本は内視鏡的治療が進んでいる。早期発見は治療費も少なく、社会復帰も早い」と、あらためて早期がん発見のメリットを訴えた。

 伊藤氏がメインテーマで取り組んでいるのは「循環がん細胞」と呼ばれるものだ。この細胞は、がんの原発巣から離れて血管の中に入り込み、血行性転移を起こす直接の原因と考えられている。伊藤氏はこれを早期診断・がんの転移メカニズム解明の重要な研究材料としてとらえ、世界でも珍しいとされる、限りなく無垢な状態の「無標識循環がん細胞」の採取に取り組む。無標識循環がん細胞は、細胞機能解析、分子標的医療薬といった次世代の抗がん剤創薬にも役立つという。

 伊藤氏は、「かつては10年かかった成果が今後は1年で出るようになる。これまではアイデアがあったけれども技術が追いつかなかったが、これからはアイデアさえあれば実現できる時代になるだろう」と語り、講演をしめくくった。