東京ミッドタウンクリニック健診センター長の森山氏
東京ミッドタウンクリニック健診センター長の森山氏
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 東京ミッドタウンクリニック健診センター長 常務理事の森山紀之氏は、「次世代がん診断サミット2015 ~「超早期」への破壊的イノベーション、始まる~」(2015年9月2日、主催:日経デジタルヘルス)に登壇し、「がん検診の課題と早期診断技術への期待」と題して講演した。同氏は千葉大学医学部を卒業後、国立がんセンターでがん予防・検診研究センター長を務め、現在までがん検診の最前線で数多くの患者と向き合ってきた。

 森山氏はまず、日本におけるがんの男女比率、発がんメカニズム、症例別の順位、年齢別の傾向などを示しながら、日本人にとって身近な疾患であることを説明。例えば、乳がんは近年急激に増加の一途をたどり、「それらの背景には食習慣の欧米化が起因しているのではないか」と語った。ただし、乳がんは予後が順調なため、必ずしも致死率は高くないと述べ、「むしろ進行状況と悪性度が問題」だとした。

 がん発生の要因として多いのは、食習慣、たばこ、感染症など。国立がんセンターの調査によると、がんの5年生存率は1964年からの30年間で41%から60%までに改善されたが、ここでも進行してしまったがんには、さほど治療法の効果がないとした。こうしたことから、森山氏はいかにがんの早期発見が大事かを訴えた。

 早期にがんを見つけることは生命に関わるのはもちろんのこと、費用面でも多大なメリットをもたらす。例えば、大腸がんの治療費は、内視鏡検査により内視鏡手術を行なって治癒した場合はおよそ6万円台後半~8万円台後半だが、進行がんで発見され、その後に転移や再発などを繰り返し抗がん剤治療などを施して6~7年後に亡くなった場合は1000万円を超えてしまうこともある。

 今日では検査薬を用いるPET検査、CGを用いた仮想内視鏡のような侵襲が少ない画像技術の発達により、さまざまな方法で早期発見が可能な時代になった。しかし、日本では海外に比べてがん検診の受診率が低く、それゆえに「診断の限界がある」と森山氏は話す。

 受診率の低さには、面倒くささ、自分ががんになるはずがないという思い込み、高額な受診料、がんに対する不十分な教育など、複合的な要素が重なっているとする。「人は車検には多額のお金を出すのに、がん検診はもったいないと思ってしまう。検診でがんが見つかってしまう恐怖もあるのだろう」(森山氏)。これら状況を踏まえながら、今回のイベントでも紹介されるさまざまな早期発見診断技術に対する期待を示した。