IoT(Internet of Things)という概念を取り込み、急速に進む工場のスマート化。ただし、その実現には多くの課題が山積していることも事実である。これまでの工場の領域を越えた「超工場」ともいうべき連携を果たすには、広い視野に基づいた横断的な取り組みが不可欠となる。

 自動車産業をはじめとするものづくりが盛んな名古屋で2016年6月16日に開幕した「FACTORY 2016 Summer」(17日まで、名古屋国際会議場)では、そのようなスマート工場を実現するためのソリューションが数多く展示されていた。

FACTORY 2016 Summerを含む複数のイベントが同時開催されている「ITpro EXPO 2016 in 名古屋」の会場風景
FACTORY 2016 Summerを含む複数のイベントが同時開催されている「ITpro EXPO 2016 in 名古屋」の会場風景
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<情報統合>

 スマート工場では、工場内外のさまざまな情報を統合することによって、付加価値や生産性の向上を図ることが求められる。これまでは個別に存在していた情報システムや、そこに格納されているデータを連携させるための仕組みが欠かせない。

 シンクロン・ジャパンが出展していたのは、アフターサービスに焦点を合わせた在庫管理システムおよび価格管理システムである。製造業における付加価値の源泉を可視化した図として広く知られる「スマイルカーブ」からも分かる通り、アフターサービスの付加価値は非常に高く、企業にとっては収益の柱になり得る領域だ。それにもかかわらず、アフターサービスへのIT投資は決して高くなく、非効率なプロセスが温存されていることで、収益化の機会をみすみす逃していると、同社代表取締役社長の落合克人氏は指摘する。

 そこで、同社の在庫管理システムおよび価格管理システムでは、「グローバルレイヤー」と呼ばれる仕組みによって、ERP(Enterprise Resource Planning)など既に稼働している情報システムのデータを集約する。プライチェーンの状況を把握できるようになり、「在庫の適正化」や「損をしない値付け」が可能になるという。

シンクロン・ジャパンの展示ブース
シンクロン・ジャパンの展示ブース
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 データ・デザインは、3Dデータを中心に部品表や工程管理表といった関連データをひも付けられるブラウザーベースのWebアプリケーション「Centro」を展示していた。これによって、パーツごとのコスト情報や開発進捗情報などを簡単に調べられるという。購買部門や営業部門などでの利用を想定している。

 一般にCADファイルなどの3Dデータは設計部門しかアクセスできないので、それ以外の部門が3Dデータを起点にさまざまな情報を調べたり活用したりすることは難しかった。Centroは、このような課題を解決するものである。

データ・デザインの「Centro」のデモ画面
データ・デザインの「Centro」のデモ画面
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 Centroでは、「プロジェクト」という単位で情報を管理する仕組みで、プロジェクトごとに必要な3Dデータや関連データの保管場所を指定すると、自動で3Dデータの収集や関連データのインデックス化を行う。その際、3DデータとしてCADファイルや中間ファイルをそのまま持ってくるのではなく、ブラウザーでの閲覧に向く専用のファイル形式に変換している。ファイル変換やデータ表示には、同社の3Dビューワー「SpinFire」のエンジンを流用している。

 Centroの提供開始日などは、「第27回設計・製造ソリューション展」(2016年6月22~24日、東京ビッグサイト)で発表する予定だ。価格は月額利用料モデルで、7万~8万円(500ユーザーまで)になる見込みだという。