久しぶりにエレクトロニクス機器のメイン基板に大きな変化が訪れている。長らくメイン基板には、主にCu(銅)箔層をエッチングして配線を形成する「サブトラクティブ法(通称:サブトラ)」が使われてきた。それがいよいよ変わる。配線の微細化に向け、極薄のCu箔を土台に、その上にめっきで配線を形成する「MSAP(Modified Semi Additive Process、エムサップ)」への移行が始まったのだ。

 この動きをけん引すると噂されるのは、今年発売されるとの見方が強い次期「iPhone」。「大型の有機ELパネルの採用に伴って電池が大容量化し、その影響を受けてメイン基板の面積が半分ほどに縮小される」との観測が広がっている。これを実現するカギがMSAPの導入というわけだ。MSAPを用いた基板の量産がまさに始まった段階とあって、「JPCA Show 2017」(2017年6月7~9日、東京ビッグサイト)会場では「MSAP」の文字が目立っていた*1

10年以上経つ製造装置シリーズに火がつく

 MSAPは文字通り、プリント配線基板に微細配線をめっきで形成する「SAP(Semi Additive Process)」法の1つだ。ただし、一般的なSAPがシード層を形成する必要があるのに対して、MSAPは極薄Cu箔の上にめっきで配線を形成するという違いがあり、微細配線を比較的作りやすいとされる。MSAPは新技術というわけではなく、小型のパッケージ基板などで以前から採用されており、日本でもMSAPを使った基板が生産されてきた。それが、メイン基板で採用されるとあって、盛り上がりを見せているのだ。

MSAP基板向けをうたう日本電産リードの導通短絡検査装置「STAR REC M6 II SW」。
MSAP基板向けをうたう日本電産リードの導通短絡検査装置「STAR REC M6 II SW」。
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 「初代機の発売から10年以上経つ製品が、ここにきてバンバン売れ始めた」と話すのは、MSAP関連製品としてHDI(High Density Interconnect、高密度実装配線)プリント基板の導通短絡検査装置をJPCA Showで展示していた日本電産リードだ。同社の「STAR REC M6 II SW」はもともとMSAP対応の製品だが、検査できる基板サイズ(ワークサイズ)を順次拡大しており、現在の製品では250mm×300mmのサイズまで対応可能でスマートフォンの基板も検査できることから人気製品になっているという。「台湾や中国、韓国から追加注文も入ってきている」(同社の説明員)。