“生存患者のデータ”対“死亡患者含むデータ”

 (3)の創薬や医療機器開発のための研究を目的とした医療情報活用を可能にしたのが、次世代医療基盤法である(関連記事)。2017年4月28日に国会で可決・成立し、1年後の施行を目指して今後、詳細なルールや体制づくりが進められる。

 山本氏は、次世代医療基盤法が対象とする医療情報と改正個人情報保護法が対象とする医療情報には異なる点があると指摘する。最も大きな違いが、改正個人情報保護法では“生存する個人”に関する情報が対象なのに対し、次世代医療基盤法では死亡した患者の情報も対象にしている点である。

 この他、匿名加工情報についは、改正個人情報保護法では個人情報保護委員会規則で定める基準に従うこととされるが、次世代医療基盤法では“主務省令”で定める基準に従うとされている。「中身はほとんど同じだが、まだはっきりしないのが実状だ」(山本氏)という。

 次世代医療基盤法は、医療情報のビッグデータ化と利活用に道を開く法案との位置付けだが、山本氏は「次世代医療基盤法だけで十分かというと、そうではない。医療健康にかかわる情報は医療情報だけではないからだ」と指摘する。例えば、ウエアラブル端末などで個人が直接収集する活動量などの健康情報は、医療情報と言えず法律の対象外となる。「医療情報でないから、(第三者が)収集していいのか、いけないのかはっきりしない」(同氏)。

 また、海外渡航歴の有無は疾患に関して重要な情報になるが、そうした点の取り扱いについても十分ではないと山本氏は見る。同氏は個人的な意見としつつ、「医療データの活用に関する制度整備は、慎重に考えた方がいいのではないか考えている」と述べた。

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