学会での症例報告は…

 次に、(2)学術研究や学会での症例報告はどう取り扱うべきなのか。つまり、診療に直接関係しない医学研究や医療・介護の周辺サービス発展のための利用についてである。

 山本氏はまず、学術研究の場合は、「個人情報保護法第76条(適用除外)により、倫理指針などである程度、利活用は確保されている」とした。ただし、「学術研究だけが研究でなく、一般病院で行う医学研究もあるし、企業が行う研究もある」(同氏)と指摘。それぞれ対応が異なってくるとした。

 そもそも、前出の第76条(適用除外)で規定されている「学術研究を目的とする機関又は団体」とは何を指すのか。これは、単なる製品開発のための研究や学術研究が主たる業務ではない機関は含まれないという。つまり、企業はもちろん、「一般病院も適用外となる」(山本氏)。一方、大学病院は該当するものの、「『人を対象とする医学系研究に関する倫理指針』などガイダンスに従う必要がある」(同氏)。

 一方、学会での症例報告はどうなるのか。症例発表などの場合に氏名や生年月日、個人識別符号などを取り除くことで特定の個人を識別できないよう匿名化しても、症例や事例によっては他の情報との照合で個人を識別できてしまう場合がある。その場合には、利用に際して本人同意が必要になるという。大学病院は前出の第76条(適用除外)の対象となるものの、指針に該当する研究では原則としてインフォームドコンセント(同意)を得る必要がある。なお、この場合の個人情報の匿名化は、「(個人情報保護委員会の規定するルールで匿名化する)匿名加工情報とはまったく異なるものだ」(山本氏)とし、混同した利用に十分注意するよう促した。