次世代医療基盤法の全容とは…

次世代医療基盤法の全容
次世代医療基盤法の全容
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 次世代医療基盤法には、大きく2つの要素がある。一つは、各医療機関における医療情報の収集の仕組み。もう一つは、ビッグデータ化して利活用するための「認定匿名加工情報作成事業者」(以下、認定事業者)を認定する仕組みである。

 このほど全面施行となった改正個人情報保護法では、医療情報の大部分は「要配慮個人情報」に指定され、組織外に持ち出す場合には必ず患者の本人同意(オプトイン)を明確にする必要がある。このため、第三者が個人情報を取得することや使用目的を変更することができなくなった。

 藤本氏は「医療機関が、特定の目的ごとに本人同意を取得したり、匿名加工したりすることは困難。そこで、オプトアウトという形をとって患者本人に拒否されない限り第三者(認定事業者)に提供できるようにしたことが、次世代医療基盤法の大きなポイントの1つだ」と語る。つまり、患者本人には同法律に基づいて、匿名加工した医療情報をさまざまな研究開発に利活用することを明文化して告知。本人が提供を拒否しなければ、認定事業者に対して個人の医療情報を提供できるようにしたというわけだ。

 一方で、医療情報の提供を受ける認定事業者は、十分な匿名加工技術を有し、かつ高い情報セキュリティーを持ち、適正・確実な運営を行えることが認定のポイントとなる。医療分野での匿名加工は、極めて高度な“さじ加減”が求められると藤本氏は指摘する。「(個人を特定できないよう)特異なデータを取り除いていくと、研究内容によっては役に立たない情報になる場合もある。特異性をどのようなレベルまで残しつつ、特定不可能にするかが重要。(個人情報保護委員会が定める匿名加工ルールに従いつつ)研究内容に応じて匿名化の方法、レベルを変えていくことが、医療分野における匿名加工の重要な部分になる」。認定事業者は研究内容を理解した上で、その要求に応じた匿名加工対応ができることが求められるとした。

 なお、認定事業者が匿名化した医療情報の統計データやデータセットを提供する先としては、大学などの研究機関や行政機関、製薬企業、医療機器開発企業や人工知能を活用する次世代の医療システム関連企業などが考えられている。「こうした組織は、利用するデータに対する代金を認定事業者に支払う。その収益で、例えば医療機関から必要なデータを収集するために、医療機関がICTやセキュリティーへの投資が必要な場合、認定事業者がある程度負担していくことを想定している」(藤本氏)。

 こうした流れを生み出していくには、仕組みを利活用する組織・企業をいかに増やすかが重要となる。藤本氏は、「基盤を使って研究していく組織や企業に対して、国として必要な支援をしていくことが当面の目標と考えている」と語った。