「第21回 日本医療情報学会春季学術大会 シンポジウム2017 in 福井」が2017年6月1~3日に福井市のフェニックス・プラザで開催される。今回の大会テーマは、「医療情報における解体新書 -医療ICTの変革における医療情報の役割-」。大会長である福井大学医学部附属病院医療情報部 准教授の山下芳範氏に見どころを聞いた。

(聞き手は小谷 卓也、増田 克善=日経デジタルヘルス)

大会長を務める山下氏(写真:山岸政仁、以下同)
大会長を務める山下氏(写真:山岸政仁、以下同)
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――今回の大会テーマを「医療情報における解体新書 -医療ICTの変革における医療情報の役割-」とした背景を教えてください。

 福井・小浜藩出身の杉田玄白は「解体新書」を完成させ、西洋医学を広げることに大きく寄与しました。それにならって、新たな技術が医療ICTを進化させ、現場に拡大していくきっかけにしようとの思いを込めたテーマです。

 医療情報学会の福井開催は初めてです。福井県には、世界に3つしかない「恐竜博物館」があり、展示だけでなく新たな発見もされています。大会初日と4日には会場から博物館までシャトルバスを運行し、大会に参加されたみなさんに見学ツアーを予定しています。多くの恐竜骨格や標本を見て、新たな刺激にしてもらえればと思っています。

――今大会の具体的な見どころを教えてください。

 まず、医療情報活用の制度に関するホットな話題の提供です。つい先日、匿名加工された個人の医療情報を大量に集めて分析し、個々の医療機関以外で研究開発に活用できる「次世代医療基盤法」が成立しました。そこで今大会では、匿名加工された医療情報のビッグデータ活用研究が可能になることによって、医療ICTを駆使した医療情報の活用がどう変わってくるのか示唆する特別講演を用意しています。

 大会直前の5月30日には、改正個人情報保護法が施行されます。この件については、日本医師会との共同企画セッションを設け、医療や介護現場における情報の取り扱いにどのような影響があるのか議論します。

 次に、医療情報におけるビッグデータと機械学習の現場活用についても、目玉企画の1つとしました。これは、さきほどの次世代医療基盤法にもかかわる話です。

 現在、IBM Watsonをはじめとして、新たなビッグデータ解析環境が整いつつあります。こうした技術の現状を理解する必要があると考え、それらを比較して学べるセッションを設けました。Watsonの他にも、クラウド環境での機械学習を提供するマイクロソフトの「Azure」や、パナソニックのウエアラブルセンサーによるデータ解析などの技術を紹介してもらいます。我々が、医療情報の中でこれらの技術の活用に対してどのようにアプローチすべきかを議論していきたいと思っています。