聴診器を当てる際の正しい位置や順序、時間を、米Microsoft社のジェスチャー入力デバイス「Kinect」で学ぶ。そんな聴診演習システムを、岩手県立大学 ソフトウェア情報学部 教授の村田嘉利氏のグループが開発。「ITヘルスケア学会 第10回記念学術大会」(2016年5月21~22日)のポスターセッションで発表した。

発表する岩手県立大学の村田氏
発表する岩手県立大学の村田氏
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 従来の聴診演習システムは、呼吸音を再現するマネキンを使うものが主流で、数百万円と高価。今回のシステムは、Kinectを活用することで「15万円以下で組める」(村田氏)。岩手県立大学 看護学部と共同で、看護学生などの演習に使うための検証を進めている。

 このシステムでは、ジェスチャー検出のマーカーとして機能するダミーの聴診器を看護師役の学生が持ち、患者役の学生の胸部に位置を変えながら当てていく。この間、聴診器が当たった位置をKinectで検出し、呼気状態であるか吸気状態であるかも判定する。この方法で「腹式呼吸、胸式呼吸ともに取れることを確認した」(村田氏)という。

 ダミーの聴診器を当てている間に看護師役の学生が聴く音声は、パソコンと接続されたイヤホンから再生される呼吸音だ。患者役の学生の呼気状態と吸気状態に同期し、診断しようとする疾患に特有の呼気音/吸気音が聞こえるように再生音をプログラムしておく。これにより看護師役の学生は、聴診器を正しい位置と順序、時間で当てた時に、疾患に特有の呼気音/吸気音を聞き取ることができる。こうした流れで、さまざまな疾患に対する聴診器の正しい当て方とそれによる診断を学べる仕組みだ。

 看護師役の学生が患者役の学生に対するときの挨拶(音声)や表情も収集し、クラウド(Microsoft Azure)に蓄積。聴診器の当て方だけでなく、患者に接するときの態度全体を学習できるようなシステムを構築する考えだ。