スマートホームにウエアラブルを上回る期待感

「中国でスマート家電の販売が伸びている」

IFA Global Press Conference 2016で講演するGfK社のFriedemann Stockle氏
IFA Global Press Conference 2016で講演するGfK社のFriedemann Stockle氏
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 こう指摘するのは、調査会社GfK社で洗濯機や冷蔵庫などの大型白物家電の調査を手掛けるFriedemann Stockle氏(同社 Global Director MDA and Automobile)だ。

 スマート家電は、インターネットで各種サービスを利用できる家電製品のこと。最近はスマートフォンのアプリと連動するケースが多く、例えば、離れた場所にいても家電を遠隔操作できたり、動作状況を知らせてくれたりする機能などを備えている。

 Stockle氏のメッセージは、IT(情報技術)を用いた「スマートホーム」分野の市場拡大をけん引する地域が大きく変わっているということだった。これまで先進国が引っ張ると思われてきたスマート技術を消費する主役は、ミドルクラス(中間所得層)の急速な増加とともに中国や東南アジアなどの新興国に移ろうとしている。香港と深圳で2016年4月17〜20日に開催された報道関係者向けイベント「IFA Global Press Conference 2016」(主催:ドイツMesse Berlin社)の講演で見えた市場の変化だ。

 GfK社が2015年に中国や日本、ブラジル、米国などの7カ国、7000人以上の一般消費者を対象にオンラインで実施した調査では、約9割が「スマートホーム(Smart Home)」という言葉を認識しているという結果が出た。

中国では、「今後数年間で自らの生活にインパクトを与える存在」として「スマートホーム技術」を挙げる消費者が75%に達した
中国では、「今後数年間で自らの生活にインパクトを与える存在」として「スマートホーム技術」を挙げる消費者が75%に達した
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 さらに半数の消費者が、今後数年間で自らの生活にインパクトを与える存在として「スマートホーム技術(Smart Home Technology)」を挙げている。これは「ウエアラブル技術(Wearable Technology)」に期待する消費者の割合(35%)を大きく上回った。

欧州最大の家電見本市「IFA」を運営するドイツのMesse Berlin社が中国で初開催した家電関連の展示会「CE China」では、欧州の家電大手がスマート家電をアピールした。写真は、ドイツSiemens社のブース
欧州最大の家電見本市「IFA」を運営するドイツのMesse Berlin社が中国で初開催した家電関連の展示会「CE China」では、欧州の家電大手がスマート家電をアピールした。写真は、ドイツSiemens社のブース
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 国別に見ると、「スマートホーム技術にインパクトあり」と答える消費者の割合の高さでは中国が突出しており、75%に達しているという。一方、同じようにスマートホーム技術を捉える日本の消費者の割合は19%と、ほかの6カ国の数字を大幅に下回った。

 「これまで日本は先端技術で世界をリードしてきたが、家のサイズが小さいなど市場に特殊性がある。今後数年、スマートホーム関連では中国が市場を引っ張ることになるだろう」と、Stokle氏は分析する。

 中国でスマート家電の販売が伸びる背景には、スマート家電と普通の家電の価格差が小さくなっていることがある。例えば、GfK社による冷蔵庫の販売価格調査では、2015年後半に入り、特に高価格帯の大型機種で「スマート冷蔵庫」と「スマートではない冷蔵庫」の価格差がほとんどなくなっているという。

 消費者がスマートホーム技術を備えた家電を買う障壁と挙げる項目で最も多いのは価格で、その壁が低くなっていることが「同程度の価格ならばスマートなものを」という購入意欲を後押ししているというわけだ。

中国ではスマート家電と、普通の家電の価格差が小さくなっている
中国ではスマート家電と、普通の家電の価格差が小さくなっている
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