「これからの15年を早送りしてみましょう」

 2030年に世界の姿はどう変わっているか。未来のグローバルメガトレンドこそ、家電やモバイル端末などの民生機器の市場を占うカギになる。こう話すのは、ドイツの市場調査会社GfKで家電関連のGlobal Directorを務めるJuergen Boyny氏だ。2016年4月17~20日に香港と深圳で開催された報道関係者向けのイベント「IFA Global Press Conference 2016」(主催:Messe Berlin)で15年後の未来を語った。

IFA Global Press Conference 2016で講演するGfKのBoyny氏
IFA Global Press Conference 2016で講演するGfKのBoyny氏
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 民生機器市場に影響をもたらす動きの代表例は、人口動態である。国際連合の予測によれば、現在73億人の世界人口は、2030年に85億人に増加する。この人口増のトレンドの中で大きく変容する事象がある。それは、ミドルクラス(中間所得層)の生活者の割合が世界規模で急速に増えていくことだ。

 例えば、経済協力開発機構(OECD)では、2030年にミドルクラスの人口が世界で49億人に達すると予測している*1。これは、現在のミドルクラス人口の18億人に比べて3倍弱の数字で、2030年の世界人口比では58%に相当する。

*1 OECDでは、ミドルクラスを1日に1人当たり10~100米ドルの消費ができること(購買力平価ベース)と定義している。

2030年に世界人口は85億人、ミドルクラスの人口は49億人に達する
2030年に世界人口は85億人、ミドルクラスの人口は49億人に達する
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 一般にミドルクラスの所得レベルになると、消費が家電や自動車などの耐久消費財に向かうとされる。つまり、15年後には世界人口の半数を超える6割近くの人々が、家電メーカーや自動車メーカーのポテンシャルユーザーになるということだ。人口増分の絶対値で見れば、ミドルクラスは実に30億人以上も増えるのである。

 しかも、ミドルクラスの増加が著しい地域は日本の近隣、つまりアジアである。2009年にはアジア太平洋地域(オーストラリア、ニュージーランドを含む)のミドルクラスが世界のミドルクラス人口に占める割合は28%と1/3に満たなかった。これが2030年には、66%に増える見通しだという。新興国の経済成長によって世界のミドルクラスの2/3はアジア太平洋地域で生活しているという状況になると、Boyny氏は米国の調査機関による予測を提示した。

 ミドルクラスの増加と同時に世界規模で進行中のメガトレンドは、大都市への人口集中(都市化、urbanization)である。現在、都市部に住む生活者の割合は世界人口全体のほぼ半分。この割合が、2030年には2/3になると予測されている。

 人口が1000万人以上の都市圏、いわゆるメガシティの規模はさらに巨大になっていく。例えば2030年、インドのデリー周辺の都市圏人口は現在の2500万人から3610万人に、中国・上海も800万人ほど増えて3100万人に近い水準になる見通しだ。このほか、バングラデシュの首都ダッカが2740万人、パキスタン最大の都市カラチが2480万人と、いずれも都市圏人口トップ10に入ってくると国連は予測している。

大都市への人口流入が世界的に進むことで、メガシティはさらに巨大な都市圏へと成長する
大都市への人口流入が世界的に進むことで、メガシティはさらに巨大な都市圏へと成長する
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