椅子から立ち上がり、確かな足取りで一歩一歩前に進む。決して広くはないスペースだが、アシスト機器を身に着けた状態で聴衆の周りを歩いて回り、階段の上り下りまで披露した。そんな彼女の様子は「下半身の感覚が全くない」ことを感じさせなかった――。

電動外骨格「TWIICE」を使った階段を上るデモンストレーション

 これは、「MEDTEC Japan 2017」(2017年4月19~21日、東京ビッグサイト)のスイス大使館科学技術部のブースで披露されたデモンストレーションの様子。スイスの大学Ecole Polytechnique federale de Lausanne(EPFL) Laboratory of Robotic Systems(LSRO)の研究チームが開発している電動外骨格「TWIICE」のデモである。下肢に麻痺のある患者が、日常生活の動作において自立や歩行の感覚を取り戻せるようにすることを目指す機器だ。

TWIICEを使って聴衆の周りを歩く障害者アスリートのSilke Pan氏
TWIICEを使って聴衆の周りを歩く障害者アスリートのSilke Pan氏
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 TWIICEを装着するパイロット(利用者)は、杖のトリガーボタンを使って動作を指示する。前後方向への移動や階段の昇降が可能だ。

 デモンストレーションでパイロット役を担ったのは、障害者アスリートのSilke Pan氏。同氏はTWIICEを携えて、2016年10月にスイスで開催された障害者のための競技会「サイバスロン(Cybathlon)」に出場し、外骨格レースの部門で4位に入賞した。

 TWIICEは膝と腰に搭載したブラシレスDCモーターで下肢の動作をアシストする。足1本当たり2カ所にのみモーターを設置することで、動きがよりダイナミックになり自由に動けることを可能にしたという。

 既存の電動外骨格との違いは、「下半身が全く動かない人でも自分の意志で自由に歩くことを可能にした点」だとLSROの開発担当者は話す。パイロットの体全体をTWIICEで持ち上げる必要があるため、既存の製品よりは大きくなっているという。TWIICEの総重量は15kg。

電動外骨格「TWIICE」を使って椅子から立ち上がる様子

TWIICEは膝と腰のモーターでパイロット(利用者)の歩行を可能にする
TWIICEは膝と腰のモーターでパイロット(利用者)の歩行を可能にする
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 Pan氏が人の助けを借りずにTWIICEを使って歩けるようになるには、「1カ月の時間がかかった」という。椅子から立ち上がった状態でバランスをとることが難しかったと振り返る。ステップを踏む際には、下半身に感覚がないため、「下を向いて足がどういう動きをしているのかを確かめながら歩いている」(同氏)。

 TWIICEの提供時期は未定。モジュラー式でパイロットの用途に合わせた提供を想定している。

■変更履歴
記事初出時、電動外骨格の名称で「twice」とあったのは「TWIICE」の誤りでした。お詫びして訂正します。記事は修正済みです。