2016年のHannover Messeでは、トヨタ自動車が「EtherCAT」の採用を宣言したことで、その開発を主導するドイツBeckhoff Automation社の注目度も一気に高まった(関連記事)。2017年はそこまでのビッグニュースこそなかったものの、Beckhoff Automation社のブースからは事業拡大に向けた布石が随所に見られた。

PA参入に向けて外部人材をスカウト

 最大のトピックは、既報の通り、同社がプロセスオートメーション(PA)の分野に本格参入することである。その第1弾として新規開発した、防爆構造を備えるI/Oターミナル「ELX」シリーズとタッチパネル型PC「CPX」シリーズを展示していた。いずれも、防爆構造に関する国際標準「IEC 79」の「ゾーン2(プラントなどの定常運転時に爆発性雰囲気が発生する恐れがなく、非定常運転時に発生したとしても短時間しか存在しない区域)」に設置できるものだ。

 ELCシリーズの特徴は、IEC 79の「ゾーン0(爆発性雰囲気が連続的に、または長時間存在する区域)」にあるセンサーやアクチュエーターと直接つなげられることである。さらに、同シリーズの電源ユニットを介すことで、防爆構造ではない一般的なコントローラーもゾーン2に設置することが可能になるという。ブースでは、組み込みPCとELCシリーズの電源ユニットおよび入出力ユニットを接続していた。

中央の電源ユニットを介すことで、左の防爆構造を持たない通常の組み込みPCを「ゾーン2」に設置できるようになる。
中央の電源ユニットを介すことで、左の防爆構造を持たない通常の組み込みPCを「ゾーン2」に設置できるようになる。
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 PA分野への参入に伴い新設したProcess Industry部門を統括するBenjamin Bruns氏は、このためにBeckhoff Automation社が外部からスカウトした人物である。同氏が持つPA分野のノウハウと、同社が得意とするPCベースの制御技術を融合させる形で、数年前から製品の開発に取り組んできたという。PA分野は、Beckhoff Automation社が主力事業としているファクトリーオートメーション(FA)分野とは異なる制御方式やネットワークなどが使われてきたが、今後はFA分野で培ってきたPCベースの制御技術へのニーズがPA分野でも高まると同社は見ている。