いよいよ量産「排泄予知ウエアラブル」

 続いてトリプル・ダブリュー・ジャパン日本支社長の小林正典氏が登壇し、排泄のタイミングを予知し事前に知らせてくれる同社のウエアラブルデバイス「DFree(ディーフリー)」を紹介した(関連記事4)。高齢者を「おむつから解放する」がそのコンセプトだ。

トリプル・ダブリュー・ジャパンの小林氏。手にしているのが「DFree」
トリプル・ダブリュー・ジャパンの小林氏。手にしているのが「DFree」
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 DFreeは、膀胱の膨らみ具合を超音波で測定するデバイス。この結果をクラウドサーバーに送り独自アルゴリズムで解析して、排尿までの時間を予測する。この結果をスマートフォンに知らせることで、介護施設などにおける排泄ケア業務を支援する。

 「世界では5億人が排泄に関する悩みを抱えており、介護における業務負担が最も大きいのも排泄ケアだ。介護施設のコストの約1/4が排泄ケアに費やされている」と小林氏は話す。DFreeはこうしたニーズを捉えたことで、国内外で高い注目を集めている。製品の構想を発表した2015年2月以降、世界30カ国以上から問い合わせがあるという。国内では大手介護施設や地方自治体と、海外でも世界最大規模の介護施設とフランスで実証実験を進めてきた。

 これまでの実証から、被介護者1人当たりの介護時間が30%減少するなど、DFreeが排泄ケア業務の大幅な効率化につながることが分かった。おむつやパッドの使用量削減にも寄与し、失禁の心配から閉じこもりがちだった高齢者が外出の意欲を取り戻すなど「被介護者のQOL向上にもつながっている」(小林氏)。

 2年間の研究開発フェーズを終え、いよいよ2017年春にDFreeの量産を始める。国内外の介護施設に向けて月額課金サービスを開始する考えで、既に国内最大手の介護施設運営事業者への導入が決まった。神奈川県川崎市では2017年4月から、DFreeを導入する介護施設に最大50万円が補助される。「排泄ケアを作業からサービスへ変革する」(小林氏)という狙いが、まさに形になろうとしている。

 2018年以降には在宅・訪問介護にも対象を広げ、ゆくゆくは一般消費者もターゲットにする。直腸の変化を超音波で測定する排便予知タイプも「2017年中に製品化のめどをつけ、2018年にはトライアルを実施する」とした。

体内時計を可視化し睡眠を改善

 O:という、一風変わった名前を持つヘルスケアベンチャーからは、CEOの谷本潤哉氏が登壇した。同社は世界初をうたう、「体内時計」を可視化して睡眠を改善するサービスを開発中だ。

O:の谷本氏
O:の谷本氏
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 睡眠の悩みを抱えている人は多い。谷本氏が示した統計によれば、不眠に悩む人は日本国内だけで2000万人を超え、睡眠薬常用者は約500万人にのぼる。睡眠の質によって労働生産性に2~3倍の差が出るとされ、睡眠障害による日本の経済損失は年間5兆円にも達するという。世界では「13.8億人が何らかの不眠症状を抱えている」(谷本氏)。

 睡眠障害は疾病のリスクも高める。不眠症は「糖尿病の要因として肥満に続く第2位で、しかも肥満の要因にもなる。うつ病のリスクを40倍に高めるという試算もある」。

 こうした背景から、O:は企業などに向けて「働き方改革を睡眠改善で支援する」(谷本氏)サービスを提供する。生体の一日のリズムを生み出す体内時計を可視化する腕時計型端末と、体内時計を調整する睡眠改善コーチングアプリから成るサービスだ。眠りに着いた時間や目覚めた時間を腕時計型端末で収集し、機械学習の手法で解析。睡眠や光を浴びる時間についてのアドバイスを提供する。「睡眠薬よりも効果の高いプログラム」(同氏)という。

 コーチングアプリには、欧米における主流の不眠症療法である「CBT-I療法」を導入した。睡眠スケジュールの調整を通じて不眠症を改善するもので、デバイスとアプリを使うことでこれを手軽に実践できる。開発に当たっては、国立精神・神経医療研究センターの専門医の監修を受けた。

 まずは、健康経営銘柄に選ばれたような企業に向けて提供し、ゆくゆくは一般消費者も対象にする。「自分の時間(体内時計)に回帰しよう、というのが我々の社是。“~するのに最適な時間”を算出するサービスを通じ、多くの人のQOLを向上させることに貢献したい」(谷本氏)。