臨床でのゲノム情報の利用が進むと、医療はどう変わり、医師や医療情報システムの役割はどう変化していくのか。帝京大学 医療情報システム研究センター教授の澤智博氏は、「医療ビッグデータ・サミット2016」(2016年2月26日、主催:日経デジタルヘルス)に登壇し、このようなテーマで講演した。

講演する帝京大学の澤氏
講演する帝京大学の澤氏
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 澤氏は、ICTを活用した医療の推進において、「Precision Medicine」「Learning Healthcare Systems」「Patient-Generated Health Data」の3つがキーワードになるとして、講演では特にPrecision Medicineに時間を割いて進捗や課題を語った。

 Precision Medicineは、2015年1月に米国のオバマ大統領が2億1500万米ドルを投じるプロジェクトを発表して以降、特に注目されるようになった。研究と臨床で蓄積したビッグデータを解析し、医師や患者が利用できる情報に変換して医療に生かすというものだ。

 このPrecision Medicineの中核的存在が、ゲノム医療だ。澤氏は近年のゲノム解析技術の発展について次のように強調する。「ゲノム解析はDNAの構造が明らかになってから50年もかかって、やっとヒト1人分が完了した。そうかと思うとそれから10年で、家庭ではまだ難しいにしても、病院には導入されるレベルまで到達した。解析コストはまもなく1000米ドルまで下がりそうだ。今、ここにいる皆さんが自分の血液型を知っているように、いつかは自分のゲノムを解析されたことのない人がいない状況になるかもしれない」。