昆布のうま味成分はグルタミン酸というアミノ酸の一種である、という発見を起源に持つ企業――。それが味の素だ。研究はその後、さまざまなアミノ酸へと広がり、現在のような多角化が進んだという。多角化した事業のうちの1つが、ヘルスケア分野だ。

 「医療ビッグデータ・サミット2016」(2016年2月26日、主催:日経デジタルヘルス)では、味の素 研究開発企画部・総合戦略グループ 兼 アミノサイエンス事業本部ウェルネス事業部 専任課長の野口泰志氏が登壇。「大規模臨床アミノ酸データに基づく疾病の早期発見 ~アミノインデックスとその将来展望~」と題し、アミノ酸に関するデータを疾病の早期発見につなげる取り組みについて講演した。

講演する野口氏
講演する野口氏
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 アミノ酸に関する研究のアプローチの1つに、メタボロミクスと呼ばれるものがある。体内の代謝物を網羅的に解析するアプローチである。代謝物は、生活習慣や食事などの環境的因子や、健康状態と相関する。そのため、疾病の発見につながるバイオマーカーになり得る。

 同社が、代謝物の中でもアミノ酸に注目するのには理由がある。人体の60%は水分で構成されており、残り40%のうちの半分がたんぱく質。そして、たんぱく質はアミノ酸から成る。すなわち、アミノ酸は「人体のさまざまな代謝のハブとなっており、すべての代謝物を計測しなくても(アミノ酸から)代謝の変化を読み取れると考えられる」(野口氏)。アミノ酸は血液を通して細胞や臓器間を循環しているため、採血で計測できるというメリットもある。