2016年2月26日に開催された「医療ビッグデータ・サミット2016 ~いよいよ研究から臨床・実サービスへ~」(主催:日経デジタルヘルス)。国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科 科長/先端医療科 医長/通院治療センター センター長の田村研治氏が「ゲノム医療、日常臨床へのパラダイムシフト」をテーマにトップバッターを務めた。

国立がん研究センター中央病院の田村研治氏
国立がん研究センター中央病院の田村研治氏
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 田村氏が語ったのは、がんにおけるゲノム解析について。これらの解析は生来の超高危険度群の遺伝性がんに対応する「個別化予防」、そしてゲノム情報を用いてがんの有効な治療薬を見いだし、治療の副作用を回避する「個別化治療」という2つの方向に進んでいる。

 個別化予防の例に挙げたのが、米国の人気女優、アンジェリーナ・ジョリーさんの乳房切除手術だ。ジョリーさんは「BRCA1」と呼ぶ遺伝子の異常による高確率の乳がんリスクを避けるために、2013年に両乳房を切除。2015年には卵巣・卵管も切除した。「明らかに遺伝するがんは全体のおよそ5%と言われ、それゆえに希少がんとして見すごされてきた。彼女のような遺伝子検査による早期発見では、効果的な予防・治療の実施、十分な検診、心理面の不安軽減などのベネフィットがある」(田村氏)。

 遺伝的要素を持つがんの患者は、遺伝性なのかどうか、予防医療の選択肢はあるのかどうか、遺伝性がんに対する治療法がそもそもあるのかどうか、といった不安を抱えているという。国立がん研究センター中央病院では「遺伝相談外来」を設け、遺伝子異常をスクリーニングするだけではなく、本人と家族を交えて長期間の介入・サポートを実施している。