ISSCC 2017のRF技術分野ではパワーアンプ関連の発表が急増し、初めて丸1セッションが組まれた。Session 2「Power Amplifiers」がそれである。従来は「RF Techniques」セッションの一部に過ぎなかったパワーアンプ関連技術が1セッションを独占し、平均500名前後の聴衆を集めた。用途は概ね無線LAN、WCDMA/LTE等のセルラー(移動通信)、28GHz帯5Gシステム。またSession 17「TX and RX Building Blocks」でもパワーアンプがキーとなる無線LAN向けフロントエンドモジュールを米/英MediaTek社が発表した。

 近年のパワーアンプの技術課題は、電力効率改善の1点に絞られるといっても過言ではない。信号変調方式の高度化に伴うPAPR(Peak to Average Power Ratio)の増大がパワーアンプの電力効率を低下させ、端末の電池持続時間が逼迫する中、効率改善技術が重要性を増している。

 従来インフラ向け等の大電力パワーアンプで開発・実用化されてきたエンベロープトラッキング、ドハティーアンプ等の高効率化技術を端末向けにも展開する試みが近年のトレンドではあるが、実用化には距離があった。今回、米Broadcom社と台湾MediaTek社の2大無線LANチップベンダーが端末向けに両技術の完成度を高めたことで一気にその距離感が縮まった。コストを抑えつつ電池を持たせるパワーアンプの実用化に期待が高まる。