ソニーグループ(ソニーセミコンダクタソリューションズとソニーLSIデザイン)と東京大学 石川渡辺研究室のグループは、1000フレーム/秒に対応した高速ビジョンチップを試作し、「ISSCC 2017」で発表した(講演番号:4.9)。同チップは主に、撮像素子と取得画像を基に特徴量抽出などを行う演算器(プロセッシングエレメント、以下PE)で構成したもの。1チップで、撮像素子から読みだした画像と、同画像から演算して得られたセンシング結果を出力できる。試作品の撮像素子は1/3.2型で、127万(水平1296×垂直976)画素。1000フレーム/秒の4ビットのセンシング結果を出力した場合(1ms出力)、消費電力は363mWと小さい。「競合の半分程度」(ソニーグループ)と胸を張る。画素サイズは3.5μmと、ビジョンセンサーとしては小さいながら、感度は54396電子/lx・秒と高い。

試作したビジョンチップ(図:ISSCC、作成:ソニーグループら)
試作したビジョンチップ(図:ISSCC、作成:ソニーグループら)
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 今回の試作品は、産業用ロボットなど産業機器での利用を想定したもの。1000フレーム/秒のセンシングが可能になれば、高速にロボットを駆動し、生産性の向上につなげられる。

 こうした高速ロボットビジョンシステムを構築する場合は、一般には高速イメージセンサー(カメラ)、画像認識(センシング)処理を実施するプロセッサー(演算器)、カメラ側やロボット側に制御信号を送るマイコンという3つが必要だった。この場合、消費電力が大きく、処理に時間がかかり、遅延が発生することが課題となる。

 そこでビジョンチップでは、このプロセッサーに相当するPEを集積することで、マイコンの外付けだけで済むようにした。これにより、小さい消費電力で、かつ遅延が短いビジョンシステムの構築を可能にする。