「ISSCC 2016」(2016年1月31日~2月4日、米国サンフランシスコ)の有線通信分野では、これまで停滞気味だった高速化が進み、50Gビット/秒を超えるトランシーバーや個別回路技術の発表が印象的だった。低消費電力化では、高速化との両立を目指した新しい回路技術に加えて、高速オン/オフ機能による間欠動作で広いデータレート範囲で電力効率を維持する新技術の発表が注目を集めた。変調フォーマットは、PAM4(信号を0/1の2値ではなく0/1/2/3の4値に変調して送る方式)など多値技術の発表も目立った。トランシーバーとして完成度の高い発表が多く、Q&Aの時間には多数の質問者が並ぶなど多くの聴衆の関心を引いていた。

 チップ-モジュール間伝送向け技術では、高速化の発表が相次いだ。例えば富士通研究所は、28nm世代CMOSによる56Gビット/秒のトランシーバーを発表した(講演番号3.5)。新しい位相比較手法やDFE(判定帰還型等化器)回路構成等の工夫により、消費電力を従来の半分の4.4mW/Gビット/秒まで低減した。また、米Xilinx社は16nm世代FinFETによる40G~64Gビット/秒のトランスミッターを発表した(講演番号3.7)。レギュレーターとクロックエラー補正の工夫によりジッター特性を向上させている。