米NVIDIA社はGPUに加えて、CPUとGPUのコアを統合したアプリケーションプロセッサー「TEGRA」シリーズを持っている。2008年に発表したTEGRAの最初の製品(当時は「Application Processor 1」の略として「AP1」と命名された)は2009年に米Microsoft社のメディアプレーヤー「Zune HD」に採用され、華々しいデビューを果たした。

 その後もTEGRA 2、3、4、K1、X1とアップデートされ、進化を続けている。スペック的にもCPU、GPUのコアともに倍々の処理性能を実現してきた。TEGRA 4以降はほぼ年次で進化しており、毎年1月に米ラスベガスで開催されるCES(国際家電市)での新型チップの発表が恒例になっている。プロモーションにも年々力が入っており、GPUのコア数を72コアから192コアに、さらには256コアへと増やして性能を向上させている点をさまざまな表現を使ってアピールしている。2014年は農地に絵文字を描くミステリーサークルでTEGRA K1のチップの絵を描き、地元のローカルニュースなどで報じるなど手の込んだ演出を行った。またTEGRAを「スーパーチップ」と称して、スマートフォンのプロセッサーからクルマの自動運転の処理までこなせるとアピールしている。

 今回報告するNVIDIA社製の「Shield Pro」は、2015年1月のCES 2015で発表したTEGRA X1を搭載した据え置き型のコンピューターである。2015年夏に発売を開始した。ゲーム機としても使えるが、ホームコンピューティングを目指した多機能製品だ。OSはAndroid TVを搭載する。TEGRA X1を発表したわずか数カ月後の発売であることから、NVIDIA社の発表から製品化までのスパンは極めて短いことになる。この数カ月でチップ開発が終了して発売したわけではなく、CES発表のはるか前にチップが完成して最終評価や量産準備が進められていたのだろう。

図1 NVIDIA社の据え置き型コンピューター「Shield Pro」
[画像のクリックで拡大表示]
図1 NVIDIA社の据え置き型コンピューター「Shield Pro」