スマートフォンのみならず、多くの機器は通信処理と情報処理の2つの機能で構成されている。通信処理のチップは有線用もあれば無線用もある。一方で、情報処理のチップにはAndroidのようなOSの処理やアプリケーションの処理を行うCPU、3次元画像処理を行うGPU、カメラのレンズのひずみを補正する機能などを持つイメージ・シグナル・プロセッサー(ISP)、オーディオデータを扱うプロセッサー、H.264/H.265などの映像を処理するプロセッサーなどがある。

 スマートフォンの内部では、多くの通信が行われている。有線でのシリアル通信や増幅系の接続などのため、基板上や筐体内部では非常に多くの配線が行き交っている。これらの通信は携帯電話機やスマートフォンの進化にともない、多くが1チップ化された。

 有線・無線を含め、情報処理向けのアプリケーションプロセッサーが通信(いわゆるインターフェース)を取り込んだ歴史を以下に示す。
(1)SPIシリアル通信やUSB1.0
(2)USB2.0やLow Voltage Differential Signaling(LVDS)など
(3)MIPIやHDMI1.0
(4)USB3.0/3.1やHDMI2.0など

 今では、有線通信機能の多くが、情報処理チップのI/O(入出力)として1つのチップに取り込まれている。有線通信の機能はDevice/Host、PHY/MACなど名前はそれぞれだが、デジタル回路とアナログ回路(もしくはドライバー:アンプリファイアーのような役割の場合もある)で構成されている。半導体チップの微細化により、多くの情報処理チップが通信のデジタル回路とアナログ回路の両方、もしくはデジタル回路を持つようになった。これはスマートフォンに限らず、テレビでもクルマの情報処理チップでも同じだ。

 有線通信の機能を取り込む方法は2つある。上記のように1チップに取り込む方法と、インターフェース系チップを別チップ化して情報処理+インターフェースという2チップ構成にする方法だ。後者は米Intel社のチップセットや米Microsoft社のXboxシリーズ、ソニーのPlayStation4などで採用されている。メーンの情報処理チップとハブコントローラー(サウスブリッジ)の組み合わせだ。情報処理チップとハブコントローラーはPCI Expressで接続される。この接続も有線通信だ。

 情報処理チップの進化における課題は、内部のCPUの性能(アーキテクチャー、バス幅、速度、コア数)だけではない。いかに有線通信機能の取り込みを最適化するかが重要だ。2000年以降の携帯電話機、2010年以降はスマートフォンが広く普及する中で、半導体メーカーの課題の1つが無線通信の処理と情報処理の1チップ化だった。モデムとプロセッサーを1チップ化すると物理的なハードウエアの個数が半減し、コストダウンや部品の実装面積の大幅な削減が行えるからだ。高度な情報処理プロセッサーと高速な無線通信を1チップ化する試みは、おおよそ15年にわたって多くのメーカーが取り組み続けている。