現在、最も普及しているCPUは何か?ずばり、ARMコアを採用したCPUである。過去の出荷個数の累計ではARMコアを凌ぐものもあるが、ARMコアのCPUは2つの分野での爆発的な普及により、名実ともにトップの地位を獲得している。その2つの分野とは、モバイル機器のベースバンドプロセッサー(2G/3G/LTE)とアプリケーションプロセッサーである。ベースバンドプロセッサーはクラシックARM(ARM7/9)や「Cortex-R」シリーズのコアを採用したCPU、アプリケーションプロセッサーではクラシックARM(ARM11など)や「Cortex-A」シリーズのコアが広く活用されている。

 ただしCortex-RやAシリーズは、スマートフォン(スマホ)のプラットフォーム(チップセット化)に乗り切れなかったメーカーが撤退した結果、現在は米Qualcomm社、台湾MediaTek社、韓国Samsung Electronics社、そして中国メーカー以外はほとんど残っていない状況だ。

 ARMコアの活用は、ベースバンドプロセッサーとアプリケーションプロセッサー以外の分野でも広がっている。特に「Cortex-M」シリーズは、マイコンの主流といえるほど多くのメーカーが採用しているCPUコアだ。「近年の半導体業界でM&Aが最も多かった分野は実はCortex-Mシリーズを用いたマイコンだったのでないか」と思えるほど、ARMコアのマイコンを取り巻く環境は大きく変わった。マイコンに関わるARMコアを軸とする過去数年の主なM&Aの動きを以下に示す。

・オランダNXP Semiconductors社(LPCシリーズ ARM)+米Freescale Semiconductor(Kinetsシリーズ ARM)
・米Luminary Micro社→米TI社=ARM+MSP430
・ノルウェーEnergy Micro社→米SiliconLab社=ARM
・米Atmel社(AVR + ARM)→米Microchip Technology社(MIPS+PIC)=?
・富士通→米Spansion社→米Cypress Semiconductor=ARM
・米Actel社→米Microsemi社=ARM