半導体業界に30年以上携わっていると、繰り返される「脈波」があったことが分かる。10年以上前にデジタル家電化のブームがあった。プロセッサーの高性能化とメモリーの大容量化がメインの課題として扱われていたが、同時期には他にも多くの課題が存在した。その一つがモーターである。

 デジタルカメラのレンズコントローラー(焦点合わせやズームに使用)、DVDやBlu-ray Disc(BD)やハードディスクのドライブ装置のピックアップ制御およびトレイ開閉、プリンターの高度化(紙送りからインク移動)、携帯電話機やゲームコントローラーなどのバイブレーション――。

 デジタル家電と呼ばれた製品の多くは、モーターを随所に使っていた(図1)。われわれテカナリエはBDドライブやデジタル一眼レフカメラなどを定期的に分解しているが、多い機種では8~10個もモーターを使っているケースさえある。

図1 モーター(動くもの)が複数搭載されるDVD装置の様子
図1 モーター(動くもの)が複数搭載されるDVD装置の様子
(出所:テカナリエ)
[画像のクリックで拡大表示]

 プロセッサーやメモリーの半導体チップは、進化が速い。OSやアプリケーションソフトウエアの進化も速く、変更も頻繁だ。モーター周辺も同様に、デジタル家電の進化に合わせて著しい変化を遂げてきた。今では、ピエゾ素子との組み合わせや半導体との組み合わせによって、絶妙で微妙な制御が実現できるようになっている。