Broadcom社は自社工場を持たないファブレス半導体メーカーである。巨額の設備投資を抱え、その運用に四苦八苦するリスクはない。その一方で、自社製品の市場支配力が衰えれば、別の半導体メーカーに取って代わられる危険性がある。チップの生産力を質に取っていないため、ユーザー企業の他社への乗り換えを引き留める要因に乏しく、いかに巨大なビジネスであっても、短期間で市場からの退場を余儀なくされるリスクがある。

 Broadcom社によるQualcomm社への買収提案の意図を読み解く今回のテクノ大喜利、4番目の回答者はGrossbergの大山 聡氏である。同社のビジネスの地盤となっている通信インフラ向け半導体の市場特性から、そこでの強みを維持するための視点を考察する。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
大山 聡(おおやま さとる)
Grossberg 代表
大山 聡(おおやま さとる)  1985年東京エレクトロン入社。1996年から2004年までABNアムロ証券、リーマンブラザーズ証券などで産業エレクトロニクス分野のアナリストを務めた後、富士通に転職、半導体部門の経営戦略に従事。2010年よりIHS Markitで、半導体をはじめとしたエレクトロニクス分野全般の調査・分析を担当。2017年9月に同社を退社し、同年10月からコンサルティング会社Grossberg合同会社に専任。
【質問1】Broadcom社がQualcomm社を欲しがる理由は何だと思われますか?
【回答】 IoTのインフラ側と端末側、双方の主導権を握りたいのではないか
【質問2】Broadcom社が注力する通信系半導体で、同社が支配的な地位を占めるための条件は何だと思われますか?
【回答】他社を凌駕できる高速I/Oデバイスを提供し続けること
【質問3】買収が仮に成立したとして、機器メーカーや通信サービス・プロバイダーにはどのような影響が及ぶと思われますか?
【回答】サービス・プロバイダーが同社の動向や戦略に一層の気遣いをするようになるのではないか