パソコンとスマートフォンという、電機業界の中で一時代を築いた機器では、半導体メーカーと機器メーカーの関係によく似た変化が起きた。システム機能の1チップ化、チップセット化を推し進めることで、システム開発を半導体メーカーがリードしていくという変化である。これによって、高度なシステム構成技術がなくても、機器事業への新規参入が可能になり、市場での競争を活性化させ、パイの拡大をもたらした。その一方で、システム開発力を持つ機器メーカーは、強みを発揮できる余地がなくなり、市場から徐々に退場していった。
こうした変化が起きるための必要条件が、特定の半導体メーカーによる市場の独占または寡占体制の確立である。
IoTや人工知能(AI)関連のビジネスでは、まだシステム開発力に勝る企業が、機器やサービスの開発をリードする状況にある。今後、市場のパイを広げていくためには、パソコンやスマートフォンと同じことが起きる必要があるのかもしれない。Broadcom社によるQualcomm社の買収提案の意図を考える今回のテクノ大喜利、3人目の回答者はテカナリエの清水洋治氏である。同氏は、Broadcom社が目論むIoT関連ビジネス総取りが成功した場合、ユーザーである機器メーカーやサービスプロバイダーには何がもたらされるかを考察した。
テカナリエ 代表取締役 技術コンサルタント