パソコンとスマートフォンという、電機業界の中で一時代を築いた機器では、半導体メーカーと機器メーカーの関係によく似た変化が起きた。システム機能の1チップ化、チップセット化を推し進めることで、システム開発を半導体メーカーがリードしていくという変化である。これによって、高度なシステム構成技術がなくても、機器事業への新規参入が可能になり、市場での競争を活性化させ、パイの拡大をもたらした。その一方で、システム開発力を持つ機器メーカーは、強みを発揮できる余地がなくなり、市場から徐々に退場していった。

 こうした変化が起きるための必要条件が、特定の半導体メーカーによる市場の独占または寡占体制の確立である。

 IoTや人工知能(AI)関連のビジネスでは、まだシステム開発力に勝る企業が、機器やサービスの開発をリードする状況にある。今後、市場のパイを広げていくためには、パソコンやスマートフォンと同じことが起きる必要があるのかもしれない。Broadcom社によるQualcomm社の買収提案の意図を考える今回のテクノ大喜利、3人目の回答者はテカナリエの清水洋治氏である。同氏は、Broadcom社が目論むIoT関連ビジネス総取りが成功した場合、ユーザーである機器メーカーやサービスプロバイダーには何がもたらされるかを考察した。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
清水洋治(しみず ひろはる)
テカナリエ 代表取締役 技術コンサルタント
清水洋治(しみず ひろはる)  ルネサス エレクトロニクスなど半導体メーカーにて、1980年代から2015年まで約30年間にわたって半導体開発に従事した。さまざまな応用の中で求められる半導体について、豊富な知見を持っている。2015年から、半導体、基板、およびそれらを搭載する電気製品、工業製品、装置類などの調査・解析、修復・再生などを手掛けるテカナリエの代表取締役 上席アナリスト。
【質問1】Broadcom社がQualcomm社を欲しがる理由は何だと思われますか?
【回答】 All(IoT関連ビジネス総取り)に向けて加速
【質問2】Broadcom社が注力する通信系半導体で、同社が支配的な地位を占めるための条件は何だと思われますか?
【回答】標準化と継続
【質問3】買収が仮に成立したとして、機器メーカーや通信サービス・プロバイダーにはどのような影響が及ぶと思われますか?
【回答】システムのブラックボックス化