IoTに関連したビジネス戦略を語るとき、簡単なポンチ絵を描いて論を展開することが多い。右側に雲の形に描かれたクラウドを、左側に多種多様な機器やアプリケーションで描いたエッジを配置。そして、両者の間を簡単な線で結ぶ。そして、エッジ側でどのようなデータを吸い上げ、クラウド側でどのようなビッグデータ解析を行い、新しい価値を持ったサービスを生み出すかを説明する。

 クラウドとエッジの間を結んでいるのは、ポンチ絵上では簡単な線だ。エッジとクラウドを結ぶという機能こそあれ、そこに何の価値も、新しい商機も感じられない。しかしこれは見せかけだ。実際には、エッジとクラウドの間をつなぐ要となる部分であり、そこには莫大な数の通信ネットワーク関連のハードウエアが使われている。そして、その通信ネットワーク向け半導体ビジネスの王が米Broadcom社である。

 クラウド側のデータセンターで使うマイクロプロセッサーやメモリー、エッジ側で使うセンサーのビジネスは目立ちやすい。そして、それらの市場は、多くの企業が参入し激しく競争するレッドオーシャンと化しているようにも見える。これに対し、Broadcom社が基盤を持つ通信ネットワーク関連ビジネスは、その重要性と成長性に比して、不釣り合いなほどのブルーオーシャン状態になってはいないか。

 Broadcom社による米Qualcomm社買収の意図を探る今回のテクノ大喜利、2番目の回答者は服部コンサルティング インターナショナルの服部毅氏である。同氏は、Broadcom社の事業ポートフォリオを詳細に見て、同社の狙いと今後の展開を考察した。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
服部 毅(はっとり たけし)
服部コンサルティング インターナショナル 代表
服部 毅(はっとり たけし)  大手電機メーカーに30年余り勤務し、半導体部門で基礎研究、デバイス・プロセス開発から量産ラインの歩留まり向上まで広範な業務を担当。この間、本社経営/研究企画業務、米国スタンフォード大学 留学、同 集積回路研究所客員研究員なども経験。2007年に技術・経営コンサルタント、国際技術ジャーナリストとして独立し現在に至る。The Electrochemical Society (ECS)フェロー・終身名誉会員。マイナビニュースや日経テクノロジーオンラインなどに、グローバルな見地から半導体・ハイテク産業動向を随時執筆中。近著に「メガトレンド半導体2014-2023(日経BP社)」「表面・界面技術ハンドブック(NTS社)」「半導体・MEMSのための超臨界流体」(コロナ社)がある(共に共著)。
【質問1】Broadcom社がQualcomm社を欲しがる理由は何だと思われますか?
【回答】文字通りブロードなコミュニケーション向け半導体ビジネスを総取りして業界ダントツ企業になる戦略の一環
【質問2】Broadcom社が注力する通信系半導体で、同社が支配的な地位を占めるための条件は何だと思われますか?
【回答】通信ネットワークだけではなく、クラウドからエッジまで制覇
【質問3】買収が仮に成立したとして、機器メーカーや通信サービス・プロバイダーにはどのような影響が及ぶと思われますか?
【回答】ダントツ企業闊歩による利害(2017年9月のテクノ大喜利回答参照)