“自浄能力”という言葉がある。組織の悪弊を、自らの力で正す力のことだ。良くない習慣は、たとえ自覚があっても直すのが難しい。ましてや自覚がない場合には、自浄能力など発揮しようがない。

 一連の品質管理不安の渦中にある企業の多くには、許されない悪弊が常態化していたため、それが許されないことだということが気に掛からなかった様子が垣間見える。自覚しながら悪弊を続けるのは個人の罪だ。しかし、悪弊を自覚させない環境を生み放置するのは、紛れもなく組織と経営者の罪であろう。

 日本の製造業で顕在化した品質管理不安について論じている今回のテクノ大喜利。5番目の回答者は、エムジェイアイの前田 悟氏である。同氏は、長年にわたって品質管理での不正が続けられた現場のマインドとそこに至るまでの経緯について推し量った。また、悪弊を正すための具体的な視点についても言及している。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
前田 悟(まえだ さとる)
エムジェイアイ 代表取締役
前田 悟(まえだ さとる) ソニー入社後、1970年代からニューメディアや通信関連商品の企画、開発、商品化に従事。視聴場所を問わない世界初の無線液晶テレビ「エアボード」、外出先からでも自宅の テレビを視聴できる「ロケーションフリーテレビ」など先駆的な商品を次々と企画・商品化し、現在のインターネットにおける動画視聴の基礎を作り、パソコンや携帯電話などポータブル機器をテレビ化するコンセプトを築いた。2007年12月ソニーを退社、ケンウッドに移籍し、2008年の日本ビクターとの経営統合に参画。統合後のJVC・ケンウッド・ホールディングスにおいて技術担当執行役員常務としてR&D戦略、新規商品開発を行う。2012年エムジェイアイ株式会社設立、複数企業のコンサルタントを行う。特に現在、SigFox,、NB-IoTなどIoTビジネスの創造・発展に力を注ぐ。
【質問1】日本企業の品質管理の現場で、不正が常態化してしまう原因はどこにあると思われますか?
【回答】基本的には、製造責任感覚の欠如
【質問2】一連の品質管理の不正による波及効果の中で、最も深刻だと思われることは何だと思われますか?
【回答】日本の製造業の品質に対する絶対的信用の揺らぎ
【質問3】日本企業は、世界の中での信頼回復に向けて何をすべきだと思われますか?
【回答】品質は製品競争力の最重要要素であることを徹底的に再教育すべき