「現場力」と「人材第一」は、いずれも日本企業が自社の強みを誇示するときに好んで使う言葉である。確かに、それらは誇るべきことではある。しかし、それだけで厳しいビジネスの競争を勝ち抜くことはできるのだろうか。現場と人材さえしっかりとしていれば、経営は左うちわで好業績を謳歌できるということなのだろうか。

 一連の品質管理不安の問題においては、現場や現場の人材について語る以上に、経営や組織や管理システムにどのような不備があったのかを考えることこそが重要になるように思える。今回の品質管理不安を、「現場不安」や「人材不安」に帰着させてしまったら、それこそ復活の糸口が見えなくなってしまう。

 次々と明るみに出る日本企業の中での品質管理不安について議論している今回のテクノ大喜利。4番目の回答者は慶應義塾大学の田口眞男氏である。同氏は、日本企業と外資系企業に籍を置き、両者の経営手法や管理システムの違いについて肌感覚で知っている。その同氏が、今回の品質管理不安から日本企業が正すべき点は何かという視点から論じる。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
田口 眞男(たぐち まさお)
慶應義塾大学 先端科学技術研究センター 研究員
田口 眞男(たぐち まさお)  1976年に富士通研究所に入社とともに半導体デバイスの研究に従事。1988年から富士通で先端DRAMの開発・設計に従事。メモリーセル、高速入出力回路や電源回路などアナログ系の回路を手掛ける。2003年、富士通・AMDによる合弁会社FASL LLCのChief Scientistとなり米国開発チームを率いてReRAM(抵抗変化型メモリー)技術の開発に従事。2007年からSpansion Japan代表取締役社長、2009年には会社更生のため経営者管財人を拝受。エルピーダメモリ技術顧問を経て2011年10月より慶應義塾大学特任教授、2017年4月より同大学の先端科学技術研究センター研究員。技術開発とコンサルティングを請け負うMTElectroResearchを主宰。
【質問1】日本企業の品質管理の現場で、不正が常態化してしまう原因はどこにあると思われますか?
【回答】顧客も経営層も損益に比べれば、コンプライアンスに対する関心度が低い
【質問2】一連の品質管理の不正による波及効果の中で、最も深刻だと思われることは何だと思われますか?
【回答】品質保証に関わるコストが経営を圧迫
【質問3】日本企業は、世界の中での信頼回復に向けて何をすべきだと思われますか?
【回答】論理的な思考と生産管理システムの見直し