扱う半導体の品ぞろえが増えていくことは、半導体メーカーにとってはめでたいことだ。では、ユーザーの立場からは、1社の半導体メーカーに機器を構成する主要な機能がドンドン集中していく状況はどのように見えるのだろうか。

 汎用性の高い部品を集めて機器を構成する場合には、機器メーカーの独自性も盛り込みやすく、部品調達での2社購買などもしやすい。しかし、圧倒的に強い半導体メーカーに機能が集中してくると、そんな機器メーカーの工夫はしにくくなる。パソコンやスマートフォンでは、こうした筋道をたどっていった。

 完成度の高いチップセットは、市場の拡大に大いに貢献する。その一方で、機器メーカーにとっては、競合他社との差異化が難しくなる。Qualcomm社にさまざまな技術が集中していく様は、半導体ユーザーにはどのように映っているのか。某ICT関連企業のいち半導体部品ユーザー氏が、率直な意見を吐露した。
(記事構成は伊藤元昭)

いち半導体部品ユーザー
某ICT関連企業
ICT関連企業で装置開発に必要な半導体部品技術を担当。装置開発側の立場だが部品メーカーと装置開発の中間の立場で両方の視点で半導体部品技術を見ている。

【質問1】Qualcomm社の経営者の立場なら、自社の価値を最大化するために何をしますか。
【回答】業界で共通利用できる技術の公開

【質問2】今回の買収で、最も影響を受けると思われる競合はどこですか。
【回答】スマホやIoTなどのシステムメーカーの各企業

【質問3】買収後のQualcomm社に死角があるとすれば、どこが問題になると思われますか。
【回答】技術を抱え込みすぎて周りや先が見えなくなること