IoTシステムのエッジ側に置く機器に必要な技術のほとんどをそろえたQualcomm社。これまで同社がスマートフォンなどで展開してきたビジネスを考えれば、完成度の高いチップセットを開発し、IoT関連機器を作るメーカーに提供することで、応用市場の裾野の拡大に貢献していくことが予想される。そして、同社の技術と製品は、IoTの応用の広がりと技術の進化を律していくような影響力を持つかもしれない。

 ただし、IoTではもう1社、技術面でも事業面でも、大きな影響力を及ぼす可能性を秘めた企業がある。ARM社だ。少なくとも、ARM社を買収したソフトバンクは、いかにしてIoT市場に君臨するポジションに上るのかで頭がいっぱいだ。IoT市場に生まれたQualcomm社とARM社という2つの求心力は、市場の中で何を競うことになるのか。そしてQualcomm社がIoT市場に君臨するための課題はどこにあるのか。アーサー・D・リトルの三ツ谷翔太氏が分析した。
(記事構成は伊藤元昭)

三ツ谷翔太(みつや しょうた)
アーサー・D・リトル(ジャパン) プリンシパル
 世界最初の経営戦略コンサルファームであるアーサー・D・リトルにて、エレクトロニクス産業を中心とした製造業に対する新規事業戦略・研究開発戦略・知財戦略の立案支援、ならびに経済産業省を中心とした官公庁に対する産業政策の立案支援に従事。

【質問1】Qualcomm社の経営者の立場なら、自社の価値を最大化するために何をしますか。
【回答】 IoT市場における自社を中心としたエコシステムの形成

【質問2】今回の買収で、最も影響を受けると思われる競合はどこですか。
【回答】 IoTエコシステムにおける求心力という意味でARM社

【質問3】買収後のQualcomm社に死角があるとすれば、どこが問題になると思われますか。
【回答】ビジネスモデルの変化に伴うマネジメント思想の転換