1995年のことである。当時、3次元グラフィックスで世界をリードしていた米Silicon Graphics社は、横浜アリーナでプライベート展を開催した。会場内に設置された巨大スクリーンには、古代中国の都の様子が、精緻でありながら雄大なグラフィックスで描かれ、繰り返し映し出されていた。

 スクリーンのすぐ手前に、誕生間もない中国のベンチャー企業が出展する小さな展示ブースがあった。はるばる日本までやってきて展示会に参加したのだから、その企業はさぞかし意気込んで乗り込んだことだろう。しかし、そのころの中国企業の技術力は米国や日本の企業の足下にも及ばず、ブースを訪れる人は全くと言っていいほどいなかった。ブースの説明員は、ただ目前のスクリーンに映る中国の都を一日中見ていた。朝、ブースの前を通りかかった時も、夕方に通った時も同じだった。彼らは何を感じていたのだろうか。

 その中国企業が、その後どうなったのかは分からない。ただし、今や中国のソフトウエア産業は日本をはるかに凌駕する規模に成長し、人工知能(AI)など先端分野で世界をリードするポジションにあることは事実だ。そして、Silicon Graphics社は、その後に連邦倒産法第11章を適用され、現在の米Hewlett Packard Enterpriseの傘下に入るという運命をたどった。

 さまざまな産業分野の世界市場において、中国企業の存在感がどんどん大きくなっている。

 ともすれば、規模と資金力の大きさだけに目を奪われがちだが、中国企業の技術開発のスピードや技術レベルの向上は著しく、欧米や日本のものまねだけをしていると思ったら足下をすくわれる状況になっている。そして、巨大な中国市場だけではなく、世界市場へと確実にビジネスの場を広げている。中国発の技術や製品が、「チャイナスタンダード」として世界市場を先導する未来もうっすらと見え始めている。

 今回のテクノ大喜利では、「チャイナスタンダードは世界を制するか」と題して、中国企業が発信する技術やビジネスの手法が、世界の市場を先導する未来の可能性について議論した。今回、各回答者に投げかけた質問は、以下の3つである。

【質問1】中国企業が世界の技術開発や市場成長を先導する可能性が最も高い分野は何でしょうか?
【質問2】今後、中国発の標準が欧米発の標準に取って代わる動きが進むと思われますか?
【質問3】中国発標準に対峙して、日本の電気・電子産業はどのような戦略・施策は採る必要があると思われますか?

 3つの質問に対するそれぞれの識者による回答要旨は、以下の表の通りだ。

表 テクノ大喜利「チャイナスタンダードは世界を制するか」回答まとめ
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表 テクノ大喜利「チャイナスタンダードは世界を制するか」回答まとめ